我が子に習い事をさせるお母さん方へ…

我が子に習い事をさせるお母さん方へ…

第3回 習い事の王道 なぜピアノを習うの?
幼児教育関連の著書も多数あり、脳科学的観点・立場で教育現場に深く携わっている脳科学者・澤口俊之先生が、我が子の習い事や将来について悩むお母さんたちにもっとも伝えたいこととは?

澤口先生の画像

もっとも貴重な幼児期は短いんです

『ピアノが脳にいいってホント?』の中で、澤口先生にはピアノがどのように脳にいいか?というお話をしていただきました。

「ピアノはスキルを伸ばすだけでなく、地頭をつくる万能な習い事ということが脳科学的に証明されているというお話をしました。今おこなったことが、いろいろな能力につながる…こういった現象を“般化現象”といいます。実は、般化現象がとても重要なんですね。貴重な幼児期は、あまり時間がありません。だいたい遅くても8歳、本来は6歳までに般化現象を起こすような何かをやっておかないといけないんです。いろいろなことが将来できるためのベースを作れるのが8歳までだからなんです。もちろん様々な習い事があって、やりたいことも人それぞれですから好きな習いごとをやってスキルを身につけることは必要です。ただ、あれもこれもではお子さんも大変ですし、人生を生き抜くためにはスキルだけではダメなんです。好きな習いごとがあるなら、それもやりつつ、8歳までに般化現象を起こし能力を伸ばす効果がある習い事もやることをおすすめします。それが、今の時点ではピアノであり、そろばんであり、サッカーという研究結果が出ています。ピアノに関しては、学校の必修科目にしてほしいくらいです(笑)。どうか、幼児期の限られた時間の中で、お子さんの能力を最大限に伸ばしてあげてください」

ピアノを弾く画像

大事なのは“社会の中でうまく生きていく知能を育てること”

習い事をさせるにあたって気をつけるべきことはありますか?

「一番よくないのは、特化したものばかりやって、その成功に満足することです。つまり、計算だけ特化してできても文章問題ができないのでは意味がありません。跳び箱ばかりやってそれだけが特化してできても、ボールがうまく蹴れなければ運動知能が伸びているとは言えません。受験勉強がいい例です。あれは、勉強のスキルは身につきますが、能力を伸ばすものではありません。あくまでも受験を勝ち抜くためのスキルなんです。いい学校に受かったからといって、人生の成功ではないですよね?いい学校に入っても社会に出てドロップアウトしてしまう人はたくさんいます。逆に受験で失敗したからといって、人生で成功している人はたくさんいます。つまり、人生を生き抜くために必要なのは、スキルではなく、自分の頭で考え、自分で判断し行動できる能力・地頭が何より必要です。そこを伸ばしてあげてください。そして、どうかお子さんの目の前の成功や失敗に一喜一憂しないでください。あくまでも“今は社会の中でうまく生きていく知能を育てている”という段階なので、もっとずっと先を見据えて見守ってあげてください。お子さんが自分の夢をもち、将来それを叶え幸せな人生を送れるように、お子さんを信じて導いてあげてください」

撮影/岡村智明 構成・文/横田裕美子

お話をお聞きした人

澤口俊之
澤口俊之
1982年 北海道大学理学部生物学科卒業/1988年 米国エール大学医学部神経生物学科 ポストドクとして赴任/1991年 京都大学霊長類助手研究所助手/1991年 北海道大学医学研究科教授/2006年 人間性脳科学研究所所長就任/2012年 武蔵野学院大学教授兼任/2013年 同大学院教授兼任専門は神経科学、認知神経科学、霊長類学。理学博士。近年は乳幼児から高齢者の幅広い年齢層の脳の育成を目指す新学問分野「脳育成学」を創設・発展させている。著書に「幼児教育と脳」「わがままな脳」「学力と社会力を伸ばす脳教育」「夢をかなえる脳」「やる気脳を育てる」など多数。最近の著書に「脳を鍛えれば仕事はうまくいく」「モテたい脳、モテない脳」がある。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」、NHK「突撃!アッとホーム」等、TV番組にも出演。
1982年 北海道大学理学部生物学科卒業/1988年 米国エール大学医学部神経生物学科 ポストドクとして赴任/1991年 京都大学霊長類助手研究所助手/1991年 北海道大学医学研究科教授/2006年 人間性脳科学研究所所長就任/2012年 武蔵野学院大学教授兼任/2013年 同大学院教授兼任専門は神経科学、認知神経科学、霊長類学。理学博士。近年は乳幼児から高齢者の幅広い年齢層の脳の育成を目指す新学問分野「脳育成学」を創設・発展させている。著書に「幼児教育と脳」「わがままな脳」「学力と社会力を伸ばす脳教育」「夢をかなえる脳」「やる気脳を育てる」など多数。最近の著書に「脳を鍛えれば仕事はうまくいく」「モテたい脳、モテない脳」がある。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」、NHK「突撃!アッとホーム」等、TV番組にも出演。