熱性けいれんは再発するかも…? 保育園に預けられる?

第3回 慌てずに対処したい、熱性けいれんについて
風邪やインフルエンザなどの発熱をきっかけに起こる熱性けいれん。発作を起こした翌日に保育園に預けても大丈夫なのだろうか? 東京都立神経病院 神経小児科部長の福田光成先生に聞いてみた。

熱性けいれんは再発するかも…? 保育園に預けられる?

「通常の熱性けいれんは、平熱に下がったなら登園して大丈夫です」(福田先生 以下同)

ちなみに熱性けいれんは再発することもまれではない。通常の熱性けいれんでは、2回目の発作が再発する人は全体の約3割、3回以上繰り返す人は約1割といわれている。しかし、下記のようなケースでは、再発する確率は約2倍に上がるそうだ。

・両親のいずれかに熱性けいれんを起こしたことがある
・1歳未満での発症
・発熱から発作を起こす間隔が短時間である(概ね1時間以内)
・発作時の体温が39度以下

再発の場合、保育園で熱を出して発作を起こすこともあるだろう。再発の可能性が考えられる場合、どのように園に頼んだらいいだろうか?

「多くの保護者の方がけいれんを起こしたお子さんの様子に驚いて戸惑ってしまうように、熱性けいれんに慣れていない保育園の先生方も対応するのは大変かと思います。一度、熱性けいれんのお子さんを預かったことのある先生なら対処できるかと思いますが、受け入れを断られてしまこともあるかもしれません。預かってもらえる場合は、5分以上けいれんが続くようなら救急車を呼んでほしいこと、発作時の様子や担当医に聞いた対処の仕方を具体的に先生と共有してください」

ダイアップの使い方は?

熱性けいれんが再発する場合、坐薬のけいれん止め・ダイアップ坐剤が処方されることがある。けいれんを起こす前に使用すれば、熱性けいれんの再発を防げることも多い。

患者向け説明用リーフレット『小児科診療・2014年・11号』にある「熱性けいれんマニュアル」によると、再発の予防の方法は以下の通りとなっている。

・ダイアップなどの処方されたけいれん止めを使用する
・37.5度から38度の熱が出始めたときにダイアップを速やかに使う。8時間後も発熱が続いた場合は、もう一回使ってもよい
・解熱薬はダイアップの使用後から30分間隔をあけること
・薬で眠くなったり、逆に興奮したりすることがある。またふらつくこともあるので、転んでケガをしないように見守る
・最後のけいれんからおおそよ1~2年間。または4~5歳まで使用する

では、ダイアップを処方してもらえるように医師に頼むのがベストなのか。

「最近では熱性けいれんのガイドラインが改定され、ダイアップは以前に比べて処方されない傾向にあります。脳炎や髄膜炎が潜んでいる場合、ダイアップを使用して眠気が誘発されて意識状態が確認しづらくなり、その兆候を見逃す可能性があるためです。ただ熱性けいれんの再発率は下がりますし、発作を未然に防ぐ効果はあるので、処方が必要かどうかを相談してもいいと思います」

では、保育園の先生にもダイアップは渡した方がいい?

「たまに熱を出す直前に発作を起こしてしまう子もいるので一概にはいえませんが、発作を未然に防げるならその方が保育園も対応しやすいかもしれませんね。頼める保育園なら先生と使い方を共有して、ダイアップを渡してもいいでしょう」

熱性けいれんが親や兄弟などに既往歴があるとなりやすいって本当?

ところで、親戚にてんかんの子がいたり、自分が子どものときに熱性けいれんを起こした経験があったりすると子どもがなりやすいというが…。福田先生に確認すると、やはり傾向としてあるそうだ。

「遺伝的な要素というより体質的なものです。熱性けいれんにかかる割合として日本人は欧米人に比べると高いんですね。たとえば、親がアレルギー体質だと子どももそうであったり、親が花粉症だと子どももなりやすかったりすることと似ていると考えていいでしょう」

熱性けいれんの症状や対処法は、その子の状態によってケースバイケースだ。医師や保育施設の先生とよく話し合って、対応していこう。
(取材・文:石水典子 編集:ノオト)

お話をお聞きした人

福田光成
東京都立神経病院 神経小児科部長
東京都が運営する、国内唯一の脳神経・筋疾患専門病院。神経疾患の広い分野にわたり専門チームが治療にあたる。神経小児科では、院内の脳神経内科、脳神経外科、神経耳科、神経眼科、神経精神科、麻酔科、リハビリテーション科、神経放射線科、検査科など他神経専門科と連携し、子供の神経難病に対する高度専門医療を行う。また隣接する都立小児総合医療センターの各小児専門科の医師と協同し、神経疾患の患者さんの合併症治療に関しても質の高い医療を行っている。
東京都が運営する、国内唯一の脳神経・筋疾患専門病院。神経疾患の広い分野にわたり専門チームが治療にあたる。神経小児科では、院内の脳神経内科、脳神経外科、神経耳科、神経眼科、神経精神科、麻酔科、リハビリテーション科、神経放射線科、検査科など他神経専門科と連携し、子供の神経難病に対する高度専門医療を行う。また隣接する都立小児総合医療センターの各小児専門科の医師と協同し、神経疾患の患者さんの合併症治療に関しても質の高い医療を行っている。