東日本初!埼玉県が自転車損害保険等の加入義務化に踏み切った理由

東日本初!埼玉県が自転車損害保険等の加入義務化に踏み切った理由

第2回 自転車保険、入ってますか? 加入が義務化される自治体も!
何かと話題の「自転車保険の義務化」。ややこしいことに、各県・各自治体ごと義務、努力目標、あるいはなんの規制もないといった具合に、状況はバラバラなんですよね。他県から義務化された地域に自転車で乗り入れた場合も適用されるのか、どんな罰があるのか…。そんなもやもやを解消するべく、この4月、条例改正により「自転車損害保険等」への加入が義務となった埼玉県の担当者にお話を伺いました。

義務化地域を自転車で通行する全ての人が対象

まず気になるのが、義務化の対象となる範囲。埼玉県在住の人に限られるのでしょうか? 他県在住の人が埼玉県内で自転車に乗る場合は?

「本条例の『自転車利用者』は、『県内で自転車を利用する者』を意味します。つまり、埼玉県に在住するか否かに関わらず、県内に自転車で乗り入れるすべての人が保険加入義務付けの対象となります」(埼玉県県民生活部 防犯・交通安全課の安野さん)

なお、「自転車保険への加入が義務化された」とよく言われますが、条例に対応するのは「自転車保険」と冠した保険に限りません。自転車乗車中に交通事故を起こした場合、相手に対する補償が可能な保険であれば要件を満たすので、「自転車損害保険等への加入が義務化された」というのが正しいのです。
ただいずれにしても、住所は関係なく、県内を自転車で通行するだけでその対象になると聞けば、これまで関係ないと思っていたものの、実は当事者であったことに気づいた人も出てくるのでは。

しかも、実のところ「乗り入れる全ての人が対象」となるのは、埼玉県に限らず、すでに義務化されているどの自治体も同じ。そう聞けば、保険未加入にも関わらず義務化された場所で自転車に乗ってしまっていた? バレたらどうなる? なんてドキっとした人がさらに増えるかも。

では、義務化された場所で保険未加入のまま自転車に乗ったらどのような罰を受けるのでしょうか? 拍子抜けするかもしれませんが、安野さんによれば刑事上、行政上の処罰は特に無いとのこと。そしてこれも、どの義務化している地域でも同じ。

違反しても処罰はない。では、なぜわざわざ「義務化」という、大げさにも思える決まりを作ったのでしょう。埼玉県が東日本の他県に先んじて義務化に踏み切ったことには、こんな事情があったようです。

「平成24年4月に『埼玉県自転車の安全な利用の促進に関する条例』が制定・施行されてからも、本県においてはすべての人身事故のうち、自転車が関与する事故が占める割合は、全国平均より高いまま推移しております。また、自転車事故による高額賠償事例が全国的に発生しているなか、条例制定後も本県の自転車損害保険等への加入割合は半分に満たない状況でありました。一方、自転車損害保険等の加入については社会的に仕組みが整ってきています。そこで、被害者救済の確保等の観点から保険加入を促進していくため、条例改正により保険加入の義務付けを行ったという流れになっています。」

つまるところ、自転車損害保険等の義務化は罰を与えるためでなく「加入率の向上」が目的。さらに、埼玉県では自転車がからむ事故の多さ、保険加入率の低さがきっかけとなっているようです。ただし、ここで注目すべきは「被害者救済の確保等の観点」という箇所でしょう。

万が一の際には、誠意を尽くすにも先立つものが必要。事故は当然、保険が義務となっている地域であろうとなかろうと起きるわけですから義務化された県以外の人も他人事ではありません。ここは自分が自転車に乗る地域の義務化を待つことなく、保険加入について検討すべきでしょうね。(文・宇都宮雅之)