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面会交流で子どもの福祉を実現させる方法と問題点とは?|東北学院大学遠藤教授に取材

第24回 離婚弁護士ナビ
親子法全体を貫く基本方針のひとつに「子どもの福祉(子の利益)」という考え方があります。その「子どもの福祉」をどのようにして守ればいいのか。そもそも「子どもの福祉」とは何なのかについて東北学院大学遠藤教授にインタビューをしました。

 離婚をする際にはさまざまな問題が生じます。その中でも、子どもの処遇や面会交流は重要な問題です。こうした問題を解決するためにはどうしたらよいのでしょうか?

 

親子法全体を貫く基本方針のひとつに「子どもの福祉(子の利益)」という考え方があります。

 

しかし、この「子どもの福祉」があるからといって子どもに関する争いがなくなるわけではありません。「子どもの福祉」というのは、「どこからどこまでが子供のためである」と明確な基準をもったものではないからです。ではどのようにして「子どもの福祉」を守ればいいのか。そもそも「子どもの福祉」とは何なのかについて東北学院大学遠藤教授にインタビューをしました。

 

この記事はそのインタビューの内容を会話形式にまとめたものとなっています。

 

「子どもの福祉」の現状

アシロ取材班

子どもの福祉に関する法的な見解の現状についてお聞かせください。

 

遠藤教授

「子どもの福祉」(民法の表現では「子の利益」となっています。)という概念は親子法全体を貫く基本指針ですが、これによって、子どもに関する紛争を解決する基準が一義的に導き出せるというものではありません。

 

つまり、「これこそが子どもの福祉のための基準である」という決定的基準になるものが存在しているわけではありません。
というのも、第一に親子法は、実親子の成立や切断、養子縁組の成立、親権・監護権に関する種々の決定といった、多様な要素を含みます。

 

これらはそれぞれに独立した課題を持っていますので、それに対応する「子どもの福祉」は一律ではありえません。


また、子どもの監護に関する紛争の場面に限定した場合でも、論者によって、また時代によっても「子どもの福祉」の概念は異なり、ときにそれらは相互に矛盾することもあります。例えば、過去には、幼年期の子の監護者は母親であることが望ましい(テンダー・イヤー・ドクトリン)ということが説かれた時代もありました。今なお3歳児神話などとともに語られることもありますが、裁判規範としてはすでに基準としての役割を終えています。


また、面会交流に焦点を当てて考えてみると、例えば、子どもにとって両方の親との関係性を途切れさせずに維持すべきである、ということが子どもの福祉に沿うとなれば、面会交流は原則として認められるべきでしょう。

 

他方で、子の監護をしている一方の親との関係性が強固になればなるほど、そして、父母間の感情がこじれていればいるほど、面会交流の際、子が両親との間で板挟みになる危険性が高まります(このような状況を忠誠葛藤といいます)。

 

子どもをこのような板挟み状況に置かないことが子どもの福祉だと考えれば、面会交流は慎重にするべきだということになります。「子どもの福祉」の内容をどのように捉えるかによって、面会交流を推進すべきか、慎重に判断すべきか、結果が異なることになります。

 

なお、現在の裁判実務は前者に重きを置き、面会交流を特段の事情がない限りは実施するという立場だと言ってよいと思います。しかし、このような運用には、後者の立場に立った、有力な反論がなされています。


別の観点からいうと、「子どもの福祉」は確かに法的概念ですが、福祉学や心理学など、様々な科学的、学問的知見をもとにしてはじめて形が与えられるものです。そのため必ずしもこれらの知見に精通していない法律の実務家や専門家がその基準を語る際には、抑制的な態度が求められるのではないでしょうか。

 

また、各紛争における「子どもの福祉」はあくまでも個々の事件の特性や親子の関係性に応じて異なります。さらに、個々の特性を無視し、「このようにすると子どもの福祉は積極的に増進する」などとして、子どもの福祉を過度に振りかざすことは、家庭への過度な介入にもなり得ますから、この点への配慮も必要でしょう。


結局のところ、まず法律家がやるべきことは「子どもの福祉にとって害になる」という類型を明らかにし、それを積み重ねていくことで、子どもの福祉の外延を徐々に明らかにしていくという作業ではないかと思います。

「子どもの福祉」親の対処法

 

 

アシロ取材班

では、「子どもの福祉」に向けて当事者がやるべきことは何でしょうか。

 

遠藤教授

今まで述べたように、何か一つの基準に従って事を進めると、それで子どもの福祉が実現されるというわけではありません。

 

その意味では、当事者である父母が、自分たちのエゴからではなく、どんな幼い子であってもその子の人格を尊重し、「子どもの福祉」の実現に向けて協力しようという思いを持つことが求められるのではないでしょうか。

 

当事者が葛藤状態に置かれているときでも、子どものことについてだけは協力し、一緒に考えるべきであるということを改めて認識するための「シグナル」としての役割を担うのが「子どもの福祉」概念であるという視点もまた重要であると思います。

 

他方で、このような葛藤状態に置かれている父母にこの作業を丸投げすることは酷ですから、適切な調整をするサポーターが必要です。

 

面会交流の現状と問題点

 

 

アシロ取材班

面会交流の現状と問題点についてお聞かせ頂けますでしょうか。

 

遠藤教授

面会交流は、1960年代にはすでに裁判実務でも認められていました(当時は面接交渉と呼んでいました)。

 

その後、2011年の民法改正で、民法766条(※)に面会交流が明文化され、それは「子の利益」を最も優先して考慮しなければならない、という文言が入り、そして民法改正と同時期に、面会交流と養育費の取り決めをしたかどうかのチェック欄が離婚届に設けられました。

 

さらに、法務省や裁判所もこの時期から、面会交流や養育費に関する啓発活動を積極的に行いました。このことがきっかけとなって、面会交流に対する認知は急速に進んだように思います。

 

ただし、厚労省の最近の調査では、面会交流を現在でも実施しているとしたのは、今なお母子世帯で3割弱、父子世帯で4割強程度にとどまっています(厚労省・平成28年度全国ひとり親家庭等調査)。

——————————————- 
※第766条【離婚後の子の監護に関する事項の定め等】

1.  父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

2.  前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。

3.  家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前2項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。

4.  前3項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。

——————————————————
面会交流に関する課題について、3点ほど取り上げたいと思います。


一つ目は、条文の内容そのものに関わる点です。先ほど述べたように、面会交流は2011年の改正により明文化されました。しかし、2011年の法改正は、児童虐待等に対応する親権法の改正を中心とするものであったため、面会交流はメインの審議対象ではありませんでした。

 

面会交流に関する改正は、実はすでに1996年に法制審議会が答申しており、それがそのまま取り入れられたわけです。この間15年にわたる実務・研究の蓄積はそこに反映されていません。例えば、面会交流が誰の権利なのか、そして、どのような場合に面会交流が禁止され、制約を受けるのかは、条文中に明記されませんでした。紛争当事者にとって、紛争の帰趨がどうなっていくのか、その見通しが条文からは明らかにならない、ということになります。


二つ目は、交流のサポートに関する点です。

 

子の監護に関する争いで調停や審判手続を利用している場合、父母が強い葛藤を抱えていることが多いですから、当事者の関係を調整する専門家のサポートが必要となります。

 

家庭裁判所調査官はそのような役割を担います。例えば、裁判所の中で、調査官立会の下、試行的な面会交流を実施することで、本格的な面会交流の足慣らしをすることもあります。

 

しかし、調停や審判が成立し、実際に本格的な面会交流を実施するという段階になると、裁判所の手を離れますから、子どもの受け渡し、面会の付添い、連絡調整などでは、公的なサポートを受けることができません。

 

東京都や明石市など、無料の支援を行政が提供している場合もありますが、このようなサポートは主に民間団体が担っています。民間支援を頼る場合には、サポートは多くが有料です。裁判所で面会交流の取り決めをしたものの、それが十分実現できていない、経済的問題で支援を受けることもできないというケースは残念ながら存在します。

 

同時に、養育費の不履行にも直面しているケースもあるでしょう。裁判後、面会交流や養育費について、さらにははDV支援についてもワンストップで、かつ低廉な支援を受けるための制度構築が必要だと思います。


最後に、先ほど述べたことにも関連しますが、裁判所で取り決めをした、審判で交流が認められた場合でも、相手が交流を拒否するといった場合があります。

 

これは面会交流の不履行になりますが、だからといって裁判所は自動的に履行の強制をしてくれるわけではありません。この場合、裁判所に再度、履行勧告の申立をすることになります。履行勧告には強制力がありませんから、相手が勧告に従わない場合、最終的には強制執行(間接強制)の申立をすることになります。

 

ただし、調停条項や審判主文で面会交流の日時や頻度、交流期間の長さ、子の引渡しの方法等が十分具体的に定められていなかった場合には、執行が認められないということもあります(最高裁平成25年3月28日決定)。ですから、交流拒絶の可能性がある場合には、執行まで視野に入れた調停戦略を考える必要もあるでしょう。

 

「子どもの福祉」実現のために必要なこと

 

 

アシロ取材班

最後に親が子どもの福祉を実現するために心がけるべきことについてお聞かせください。

 

遠藤教授

面会交流は、子どもの引渡しなどの一回的紛争と異なり、長期にわたります。この間に、二人の関係性が変化することもあるでしょうし、子どもの成長に応じて、交流の形も変化するでしょう。

 

もちろん、交流が中断することもありえます。ですから、長期的視点をもって調停に臨むことが大事ですし、どのような支援が利用できるのかを検討することも必要でしょう。

 

残念ながら現在、わが国では交流実現に向けた手厚い支援があるとは言い難いですが、自分で抱え込まずに、弁護士や民間支援団体を含め、様々な支援を受ける可能性を探っていただきたいと思います。

 

また、交流の過程では、当事者双方の協力が不可欠です。信頼関係が揺らぐこともあるかもしれませんが、その時こそ「子どもの福祉」というキーワードを思い出し、その状況下でその子にとっての最善の利益とは何だろうか、ということを二人で考えるきっかけにしていただきたいと思います。

 
 

配信元

離婚弁護士ナビ
離婚弁護士ナビとは、離婚問題が得意な弁護士を探して相談できるサイトです。
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