毎日食べたい。「発酵デパートメント」の新メニューは優しくお腹を満たす発酵精進ランチコース

毎日食べたい。「発酵デパートメント」の新メニューは優しくお腹を満たす発酵精進ランチコース

2020年4月、東京・下北沢のオープンした商業スペース「BONUS TRACK(ボーナストラック)」。そのひとつにあるのが「発酵デパートメント」、全国の発酵食品や発酵に関するあらゆるものが所狭しと集められた素敵なお店です。すでにお出掛けされたことがある方やウェブショップをご利用された方もいるかもしれませんね。

東京・下北沢「BONUS TRACK(ボーナストラック)」

haccola編集部はオープン時を含めて度々お邪魔していますが、この半年間でまた一段と進化していました。取り扱う発酵食品の数も2倍以上、その数すでに500アイテムを超え、これからも増えていくようです。

同店代表で発酵デザイナーの小倉ヒラクさん

併設した飲食スペースでは、物販コーナーで販売している発酵調味料や店内で仕込んだ発酵食品を使った発酵メニューを楽しむことができます。6月から始まった予約制のディナーコースが連日好評だったことを受け、この秋からはランチコースも始まりました。それも「発酵精進ランチコース」だと聞き、早速、編集部が訪問。読者の皆さまへ、実食レポートをお届けします。

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精進料理を少しだけおさらい

精進料理は、主に修行中の僧侶が摂る食事で、鎌倉時代の僧侶であった道元禅師が確立されたと言われています。動物性食材や、五葷と呼ばれるにんにくや玉ねぎなど刺激のある食材を使わないため、消化に伴う体の負担が少なく、総カロリーも低めです。また、食材を無駄にせず大切に使うことも重要視されており、そうした精神性や健康的理由から、仏門にいない方々にも好まれています。

「僕自身あまり胃腸が強い方ではないので、同じような方々のためにも体に優しいメニューにしたいと思いました。動物性食材を使わずとも満足感のある味わいにするために発酵食品の味の複雑性を活かしています。精進料理については、典座(てんぞ)という僧侶の食事をつかさどる役目のお坊さんから教えてもらいました」(ヒラクさん)

精進料理のセオリーに加えて、小麦を含まないグルテンフリーにも対応したこちらの発酵精進は、ビーガンの方も小麦アレルギーの方も、逆にお肉や魚が好きな人にも、いろんな人が一緒においしく食べられるようにと考えられてます。さすが「世界の発酵、みんな集まれ!」をモットーにするだけあって、ルーツや背景を問わない平和的な思想の表われですね。

ランチメニューのガイドブックには、発酵料理における5つのポリシーも明記されていました。丁寧で無駄がなく、優しい観点はやはり、精進の世界と共通することだと言えそうです。

ランチメニューのガイドブック

発酵デパートメントの新メニュー「発酵精進ランチコース」

早速実食。まずは一品目、前菜「発酵点心」

発酵点心

前菜として、おいしそうな香りと湯気を上げるのは発酵点心。蒸し器の中には季節の野菜と、米粉でつくられた特性の蒸し餃子が2種類。ひとつは、ほんのり酸味を感じる刻んだザワークラウトとじゃがいも、もうひとつは、食感の良い春雨と切り干し大根のキムチ。どちらも半透明の生地に包まれてぷるぷるです。

特性の米粉の皮は包むのも難しいそうですが、見た目にも美しい点心に、気持ちも上がります。

点心に添えられたのは5種類の発酵利き味噌。日本の味噌には「大豆や穀物を発酵させたもの」という定義があるため、その定義に合わせるとこれらは「味噌っぽいもの」になる個性的な調味料です。ニッチでローカルな調味料を含めてあらゆる発酵食品を取り扱う発行デパートメントでは、この5種類いずれもイチオシ。もちろん店内の調味料コーナーで販売されています。

左の一番黒いのはカクキュー八丁味噌、真ん中手前は小池糀店の大豆チーズみそ玉、

右の薄いのが井伊商店の麦だけの味噌、中央で大粒は十和田名物ごど、赤いのが新潟のかんずり。

点心と蒸し野菜にこれらの利き味噌をつけながらいただくことで、風味が変わり、一口ごとに楽しめます。ちなみに編集部のお気に入りは、ザワークラウト&じゃがいもの点心+小池糀店独自のチーズ風味の味噌。という組み合わせでした。

どちらにする?二品目のメイン、「焼き茄子とすんき」or「発酵ボルシチ」の米麺(ミーセン)

発酵精進ランチのメインは、ヒラクさんが発酵の旅をした先のひとつ、中国西南からヒントを得て作られた米麺(ミーセン)です。ミーセンとはやはり米から作られた半透明の麺。ビーフンや春雨のようなものを想像されるかもいるかもしれませんが、それほど細すぎることはなく、弾力があるため食べ応えもあって、柔らかいけどしっかり箸でもつまむことができます。スープや具材との絡みもいいです。オーダーの際には「焼き茄子とすんき」または、「発酵ボルシチ」のいずれかから選びます。

発酵ボルシチ

編集部は今回、発酵ボルシチをチョイス。ビーツで鮮やかになったスープには、ザワークラウトの漬け汁でうまみも含まれているそうで、お米で作られたサワークリームや、丸いポテトフリットと混ぜながらいただきます。

写真と文字だけでこのお味を想像してもらうのは難儀なことかもしれませんが、複雑性を含んだおいしさが、一口目より二口目、二口目より三口目、と幾重にも積み上げられいき、しみじみをおいしいお味でした。特に、お米のサワークリームはちゃんと酸味があって、全体と混ぜた後のさっぱりした食味がよかったです。

デザートの発酵フルーツグラタンは芸術品のよう

発酵フルーツグラタン

最後はデザートで締めです。三河みりんをつかったシロップから香ばしい香りを漂わせるフルーツグラタン。マリネされた季節のフルーツの下は、寺田本家の酒粕からアルコールを飛ばし、その後で米麹と甘酒にしたという実に手の混んだ一品でした。

お砂糖を使わず、麹やみりんの甘みで大人っぽくまとめられた上品なおいしさで、あともうちょっと食べたい…と感じるところで終える量も絶妙。本当、お見事でした。

幅広い発酵ランチドリンク

食事に合わせた幅広いランチドリンクも用意されています。山梨のクラフトビールやグラスワイン、日本酒のほか、他では飲めないであろう麹菌で熟成したプーアール茶など、個性的なソフトドリンクはさすが、発酵デパートメントですね。

編集部が頼んだジントニックは、ノンアルコールのジンとバタフライピーを使って作られた、透明感のある淡い紫色。

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