敬遠しがち…。PTA活動の問題事例

敬遠しがち…。PTA活動の問題事例

第1回 仕事感覚生かし 新しいPTAを
強制的に役員にさせられ、仕事を休んで無償奉仕。伏魔殿のようなPTAは敬遠される存在だ。AERAワーキングマザー1000人委員会はPTA部会を発足。共働き時代の新しいPTAのあり方を提言する

●平日昼という常識を変えよう!

会議は平日昼間。仕事があってもPTAを優先して当然。この「鉄板ルール」が、働く親がPTAを敬遠する大きな要因だ。

東京都江戸川区で料理教室を主宰する棚瀬尚子さん(44)は5年前、公立小のPTA広報委員を担当し、くじ引きで委員長を任された。仕事があって、平日の会議には参加しづらい。PTAの活動内容を全面的に見直し、かかる時間を計算したうえで、委員に細かく割り振った。

初めての打ち合わせで、「1学期の間、一人2時間だけ手伝ってください。過去にとらわれず仕事を削減します」と訴えた。委員の負担が大幅に減り、歓迎されると思いきや、上がったのは不満の声だった。

「PTA室は母親たちのコミュニケーションの場でもありました。学校に出向くことを楽しみにしていた人たちが、仕事の削減によって存在意義を否定されたと感じたようです」

結局、改革は1年で頓挫した。

横浜市のある公立小でもPTAの会議は平日の午前中。IT企業勤務の女性(42)は昨年度、学年委員を務めたため、学校行事も含めると月3回、半休を取らなければならなかった。

地域柄、共働き世帯は少なく、7割が専業主婦。役員は「責任をもって職務をまっとうする」ために、夫と交代もできない。そもそも男性は会長だけの「女の園」だ。職場の上司に「今年は迷惑をかけます」と頭を下げ、有休を節約するため自分は発熱しても出社した。

働いている人は平日昼に都合をつけにくく、専業主婦は家族が自宅にいる夜間や週末は出かけづらいといった事情もあり、誰もが納得する会議時間の設定は難しい。

品川区立小中一貫校の日野学園のPTAは、都合のつく日に参加できる仕組みだ。平日昼でも週末でも可能で、難しければ「すきま時間」に単発の仕事を手伝うなど、関わり方を自由に選べる。「資料は作ったので印刷しておいてください」「時間がなかったので各クラスに配る準備はお願いします」など、メールやLINEで業務を共有し、引き継ぐことができる。顔を合わせる会議は月2回の土曜登校日に設定し、「子どもと一緒に登校して一緒に帰宅する」というコンセプトで家族の時間を妨げないようにしている。昨年度まで3年間PTA会長を務めた鴇田宣一さん(50)は外資系企業に勤めるサラリーマン。役員の3分の2が仕事とPTAを両立しているという

●強制は厳禁 無駄な仕事を減らそう!

寄付された山盛りの日用品に埋もれながら、食料品や生活用品、衣類を選別する。衣類は男女別、サイズ別に分け、それぞれに値札を貼っていく。この作業のためだけに3日間。バザーはPTAの有力な資金源だが、かかる手間は膨大だ。

「役員が毎年代わるのでノウハウが伝授されず、効率が悪いと感じました」
都内のある私立小で昨年度、役員を務めた女性(39)は振り返る。IT企業に勤めており、このアナログっぷりに驚いた。

バザーの時、各家庭から回収した弁当の注文用紙も手作業で集計していたため、見かねてノートパソコンでエクセルに打ち込み始めたら、周囲から浮いてしまった。学校は個人情報保護法の関係で名簿を作っておらず、最初の保護者会で全員のメールアドレスを集めることから始めなければならなかった。

前出の横浜市の女性も、名簿は手書き、連絡は「イエ電」、スケジュール調整のたびにPTA室のカレンダーを確認するため学校に出向く、という非効率なやり方に悩まされた。最たる非効率がベルマーク集め。各家庭から集めたベルマークを切りそろえ、種類を選別し、反り返るものを押さえながら、大量のセロハンテープを使って100枚ずつシートに貼る作業だ。

「貯金の感覚で子どもが貼るならまだわかるけど、なぜ親が。費用対効果で考えれば、一人150円ずつ払えば済む程度では」

『PTAをけっこうラクにたのしくする本』の著書がある編集ライターの大塚玲子さん(43)は、PTAの「無料会員枠」を提案する。

「会費は払えないけど手伝いたい、活動はしたくないけど会費は多めに払う、など多様な関わり方が認められていい。さまざまな事情を考慮して、会費徴収も活動も『強制』を見直すべきではないでしょうか」

仕事が面倒だという先入観があるため、役員選考が難航するのも悪循環だ。じゃんけん、くじ引き、全員参加など、押し付け合いになることも。

金融機関勤務の女性(43)が今年度に役員を務める大田区の公立小では、「推薦委員」が役員未経験者に電話をかけまくって次年度の「候補」を選出する。しかし「今年は留任で人数が足りた」と、結局は電話をかけたことがほとんど無駄になってしまった。

「パソコンができる人、時間の融通がきく人、などの条件と人数を最初に提示してくれれば、電話する手間もコストも省けるのに……」
(記事提供:『AERA』 文・『AERA』編集部 小林明子)