旅行のため子に学校を休ませる、アリ?

旅行のため子に学校を休ませる、アリ?

第1回 家族旅行か学校か? 賛否両論 子の学校休み論争
子どもに学校を休ませて家族旅行をするってどうですか? あり得ないという親と、家族の絆と海外体験のためには当然という親と、価値観が二分している。

昨年の連休の最終日。都内に住む会社員の女性(44)は、当時小学5年生の長女あてに、クラスメートからかかってきた電話に驚いた。内容は翌日の時間割と宿題の確認。なんと、ハワイの空港からだったのだ。

「お友だちは学校を2日休んで5日間の家族旅行中。飛行機が日本に到着してから電話すると夜遅くなるからと、離陸前に電話したそう。近場でだらだら過ごしたわが家より、有意義な休暇がうらやましかった」

●本音は安く旅行したい

家族旅行で学校を休むのはアリかナシか――。かつてなら「学校を休むのは病気か忌引だけ」というほど、“休みハードル”は高かった。だが、最近は昔の常識を覆し、学校を休んで平日に旅行するほうがお得、という親も増えてきた。

「朝、羽田発の飛行機で宮崎に行き、空港近くの海水浴場で泳ぐのが多いパターン。混雑もなく、きれいなビーチで思い切り遊べます」

そう話すのは、都内に住むキャビンアテンダントの女性(37)。自身の代休などが平日の場合は、小学2年生の長女に学校を休ませて、一緒に日帰り旅行をすることもある。自社便で安く旅行する条件は、「飛行機の席に余裕がある場合で、繁忙期は利用できません」。つまり平日便のほうが確実に利用できる。

「学校を休ませて旅でもしないと、ゆっくり子どもと向き合えない。それに本音を言えば、安く旅行をしたいから。金銭的な余裕はほかに回したいです。勉強に支障がなさそうな低学年の間と割り切って出かけています」

この女性に限らず、格安なツアーも多く、混雑も少ない平日に家族旅行を、という親は多い。でもそれだけの理由で、堂々と学校を休ませるという親は少数派のようだ。

都内に住む専業主婦の女性(38)の小学3年生の息子のクラスでは、昨年の夏、カンボジアへの家族旅行のため夏休みの後も数日休んだ子や、夏休み前にフライングしてシンガポール旅行に出かけた子もいた。

●全員に遺跡のお土産

この女性も、8月の最終週に5泊6日のハワイ旅行に出発。夏休みを1日はみ出して帰国したため、息子は学校を休んだが、その理由を堂々とは言えなかった。

「やっぱり、ちょっとズルい気がして……。担任の先生には、家庭の都合でと言いました。子どもにも一応、口止め。まあ結局バレちゃうんですがね」

ただ、カンボジアに行った家庭は、クラス全員に遺跡のお土産を配った。担任にも正直に話したところ、「ぜひ海外でいい経験を」と積極的に送り出してくれたと聞いた。「リゾートへの旅行」では気が引けるが、世界遺産を巡る、日本ではできない体験を海外でするなど、子どもに「プラスアルファ」の学びがあるなら、抵抗感も薄れるようだ。
(記事提供:『AERA』 文/三宮千賀子)