わが子の集中力がない、キレやすいは低体温が原因かも!?

第1回 低体温の子どもが増えている!
突然ですが、日ごろからお子さんの体温をきちんと把握していますか? 実は近年、平熱が36度未満の“低体温”の子どもが増えているという。体温といえば、親御さんは高熱になると体調が悪いバロメーターとして慌てて対応するものですが、低いということであまり不安に思わないもの。でも、この低体温が子どもに深刻な影響をもたらすという。

「子どもの低体温、なんらかの体温異常がおこると、朝起きるのがつらい、ボーッとしている、疲れやすい、集中力がない、すぐにカーッとなってキレやすいなど、様々な症状を引き起こしてしまうのです。子どもの正常な体温の目安は、36度台のなかにおり、寝ている3時~4時頃は最も低く、朝から高まりはじめ、登園・登校時には36.5度台くらい、16時前後は一番体温が高まっていくのが理想です」

人体の体温リズム

そう話すのは、早稲田大学人間科学学術院教授で医学博士の前橋 明先生。実は、このような体温調整ができなくなるという問題は、人間の生命活動をつかさどる“自律神経”の働きが悪くなっているのが原因だという。

「私たちの体温は、自律神経の働きによって正常値に安定しているのです。例えば、暑いところに出ていくと体温は上がり、オーバーヒートしないように汗をかかせて熱を放熱し36度台におさめようとする。寒いところにいくと体も冷えてくるから、もとに戻そうと“震え”という筋肉運動をさせて熱を作る。そうやって、オートマチックに体を守って体温調節をしてくれるのが自律神経系の働きなんです。つまり、その調整ができてこそ、意欲を出していろんなことをしたくなるのです」(前橋先生 以下同)

子ども低体温

●自律神経機能の低下は、生活習慣の乱れが原因

気になるのは、やはり自律神経の働きが悪くなる原因…。

「生活習慣の乱れは、自律神経の働きに対し、非常に大きなネックになります。例えば、遅寝遅起きや短時間睡眠になると、朝、食欲がわかない。朝ごはんを食べる時間がない。食べないと午前中の活動力が低下する。食べないから動けない、運動量が減る、体力がついていかない…。このように、睡眠、食事、運動が連鎖的に崩れることで、自律神経の働きが悪くなるので、その結果、体温をうまく36度台におさめてくれなくなるというわけなんです」

実際に、幼稚園や保育園などで体温調査すると、36度を下まわる低体温の子どもは生活習慣の乱れが共通していたという。“食べて、動いて、よく寝る”これこそが、体温のリズムをつくり、子どもたちの元気さにつながると、前橋先生は話します。

「便利で贅沢な世のなかになり、モノや情報もあふれ、忙しい現代。テレビやビデオ、ゲームのしすぎによる睡眠不足、運動不足、エアコンの使いすぎなど、自律神経が乱れる要因が溢れています。生活リズムの乱れは、知らず知らずのうちに子どもたちの体を壊し、心にまで影響してしまいます。だからこそ、幼児期から規則正しい生活習慣を身に付けることが大事です」

まずはお子さんの体温を測ってみてください。低体温など体温異常がある場合は、ぜひいま一度生活習慣を見直してみましょう!
(構成・文/横田裕美子)

お話をうかがった人

前橋 明
前橋 明
早稲田大学人間科学学術院教授・医学博士
子どもの疲労と体温との関連・乳幼児の生 活リズム・保護者の育児疲労と育児支援に ついて、主に研究。そして、研究で得た知 見を児童福祉や保育、教育に応用し、アジ アの子どもたちの健全育成について検討す るとともに、子どもたちの抱える健康福祉 上の諸問題に対処するため、幼少児の健康・ 生活習慣実態調査をアジア地域で展開している。
子どもの疲労と体温との関連・乳幼児の生 活リズム・保護者の育児疲労と育児支援に ついて、主に研究。そして、研究で得た知 見を児童福祉や保育、教育に応用し、アジ アの子どもたちの健全育成について検討す るとともに、子どもたちの抱える健康福祉 上の諸問題に対処するため、幼少児の健康・ 生活習慣実態調査をアジア地域で展開している。