「添い乳」がクセになると、夜泣きが長引く?

第1回 かまいすぎが原因? 子の夜泣きが続くワケ
夜泣き。

それは、乳幼児を育てている親にとってトップクラスの悩みのタネだ。夜中に頻繁に号泣しては親の睡眠を細切れにするわが子を前に「一体どうすれば泣き止んでくれるの?」「むしろ泣きたいのはこっちよ…」と思った経験を持つ親は少なくないだろう。 

だがそもそも、なぜ夜泣きは起きるのか? 夜泣きの定義とはなんだろう? 夜泣きのメカニズムに詳しい小児専門医・小山博史医師に話を聞いた。

夜泣きする赤ちゃんをあやす女性とうるさそうにする男性

●夜泣きの原因は睡眠サイクルと未発達な脳

「夜泣きとは、これといった原因もなしに毎晩のように決まって泣き出す現象のこと。一般には生後3・4カ月から始まります。人間の表情や動きを認知し、その意味を読み取ることができるようになる月齢から発生すると考えられています」(小山医師 以下同)

乳幼児が夜泣きをする理由は、大きくわけて2つあると小山医師は考えている。ひとつめは「睡眠サイクルの不安定さ」だ。

「睡眠は浅い眠りのレム睡眠と深い眠りのノンレム睡眠で構成されています。乳児期の睡眠サイクルは成人よりずっと短く、かつレム睡眠時だとささいな刺激でも目覚めてしまうため夜泣きにつながってしまうのでは、と考えられています」

もうひとつの原因として挙げられるのが、赤ちゃんの脳が未発達であることだ。

「生後間もない乳児は、大脳のシステムがまだ不安定です。前頭葉には不安を制御する働きがあるのですが、浅い眠りのときに情動を司る大脳辺縁系という部位が活発になると、記憶回想に伴う感情の昂ぶりが抑えられず、夜泣きという形で表れることがあると推測します」

つまり、赤ちゃんは大脳のシステムができあがっていないため、脳の興奮を抑える力がまだ弱いのだ。夜間に目を覚ますたびに大泣きしてしまうのは、睡眠サイクルが短いことに加え、脳が大人よりも不安を感じやすいから、ということのようだ。

不安定な睡眠サイクルと、脳が未発達であるがゆえに不安感情が制御できないこと。どちらか一方が明確な原因というわけではなく、この2つが相互に影響を及ぼし合って夜泣きを引き起こしているのだと考えられる。

赤ちゃんをだっこする女性

●効果抜群の「添い乳」はクセになりやすい

では、どうすれば夜泣きを防ぐことができるのだろう?

「まず基本的な対策としては、夜早く寝かせること。遅い時刻に眠る習慣がつくと、夜間に起きやすくなるという実験データが明らかにされています。生後2カ月を過ぎたあたりから、昼寝は15時くらいまでに切り上げ、夜は20時頃には寝かしつけるようにしましょう」

母乳で育てているママなら、夜泣きされるたびに添い乳で寝かしつけている人も多いだろう。だが、毎回おっぱいで寝かしつけを行うと、子どもがそれなしでは眠れなくなってしまう習慣がつき、夜泣きの期間が長引いてしまうことも明らかになっている。

「添い乳はママにとっては最も手軽、赤ちゃんにとっては強力な鎮静手段です。それだけに多用しがちになりますが、夜間の赤ちゃんは空腹で泣いているわけではありません。添い乳にどっぷり依存する前に、ほかの方法と同時進行での対応を心がけましょう」

もちろん、授乳は母子の大切なスキンシップであり、添い乳で寝かしつけるのが絶対にダメというわけではない。ただ手軽で効果が強力なだけに、多用するとやめにくくなるということはしっかり頭に入れておこう。
(阿部花恵+ノオト)

お話をお聞きした人

小山博史
小山博史
生馬医院 副院長 小児科医
医学博士。日本小児科学会小児科専門医。子どもの心相談医。東京医科大学卒業後、岸和田徳洲会病院新生児科・NICU部長などを経て、現在は生馬医院に小児科専門医として勤務。
医学博士。日本小児科学会小児科専門医。子どもの心相談医。東京医科大学卒業後、岸和田徳洲会病院新生児科・NICU部長などを経て、現在は生馬医院に小児科専門医として勤務。