メディア個別 ルポライターが語る『虐待の抑止に必要なこと』 | ルポライターが語る虐待事件 | ママの知りたいが集まるアンテナ「ママテナ」
ママの知りたい情報が集まるアンテナ

ママテナ

ルポライターが語る『虐待の抑止に必要なこと』

ルポライターが語る虐待事件
毎年増え続ける虐待件数。加害者になってしまう親、そして被害者の子どもの双方を救うために、地域や社会で取り組めることはあるのでしょうか?

これまで、国内で発生した悲惨な虐待死事件を追ってきたルポライターの杉山春さんに聞きました。

●メディアで虐待事件を取り上げることの重要性

世代間での虐待の連鎖を断ち切るには、第三者の関わりが欠かせないと杉山さんは指摘します。

「昨今、虐待や子どもへの大人の暴力のニュースは、2000年代やそれ以前に比べて一般の目に触れやすくなったように思います。以前であれば、報道されなかったレベルの状況でも、その詳細がメディアで取り上げられるようになりました。子どもへの暴力に関心が高まっていること自体は良いことだと思っています。それによって、虐待の早期発見にもつながるからです」(杉山さん、以下同)

杉山さんが取材をした虐待事件の中には、通報が遅れたり確かな情報がなかったりしたことから、行政や警察の介入が後手になり、子どもの命が救えなかったケースもあると言います。こうした事態をなくしていくためには、どのようなことが重要になるのでしょうか。

「よその子であっても、その子の育ちに地域全体で関心を持つことが大事だと思っています。幼い子どもは自分で声を挙げられないので、保育園や幼稚園、近所の人が関心を持っていくことは大事ですね。ただし、その親を批判的に見るのは逆効果だと思います。不適切な養育だと思った時に、『今、大変な状況にあるのかな。苦しいのかな』という視点をもつことは大切です。そして、自分自身の周囲にも、不安に感じたことを気軽に相談し合えるような人間関係を育むことが、虐待の抑止力になるはずです」

ルポライターが語る『虐待の抑止に必要なこと』

●“善意ある関心”が苦しむ親子を救う

ただ、多くの人は他人のプライベートには、なかなか踏み込めないと感じてしまうかもしれません。そんなときは、自分がこの子であればどう感じるか、と想像してみると良いと杉山さんは言います。

「今は人と積極的に関わらなくても生きていける社会です。面倒なことに関わりたくないという気持ちはよく分かります。格差も広がってきて、すぐ隣にいる人の困難が見えにくい時代です。困っていることを隠そうと思えば隠せてしまう。それゆえ、この社会では想像力を働かせることがとても大事なことなのではないかと思います。

もし、虐待について少しでも関心があるのであれば、ボランティアなどで困難を抱える人たちと直接ふれあうこともあってもいいかもしれません。まず、知ること親しくなること。それが、大きな一歩につながると思います」

テレビなどのメディアを通して虐待を知った気になるのではなく、いかに虐待を身近な問題として捉えられるかが大事なのかもしれません。一人ひとりが問題意識を持ち、行動に移すことで、救われる命もあるはずです。

(構成・文:末吉陽子/やじろべえ)

お話をお聞きした人

杉山春
1958年生まれ。雑誌記者を経てフリーのルポライターとして活躍。著書に、小学館ノンフィクション大賞を受賞した『ネグレクト―育児放棄 真奈ちゃんはなぜ死んだか』(小学館)のほか、2010年の夏に大阪市のマンションで二人の子供が餓死した事件を取り上げた『ルポ虐待――大阪二児置き去り死事件』(ちくま新書)、『移民環流―南米から帰ってくる日系人たち』『満州女塾』(新潮社)『家族幻想「ひきこもりから問う」』(ちくま新書)など多数。
1958年生まれ。雑誌記者を経てフリーのルポライターとして活躍。著書に、小学館ノンフィクション大賞を受賞した『ネグレクト―育児放棄 真奈ちゃんはなぜ死んだか』(小学館)のほか、2010年の夏に大阪市のマンションで二人の子供が餓死した事件を取り上げた『ルポ虐待――大阪二児置き去り死事件』(ちくま新書)、『移民環流―南米から帰ってくる日系人たち』『満州女塾』(新潮社)『家族幻想「ひきこもりから問う」』(ちくま新書)など多数。

関連書籍

ルポ虐待 大阪二児置き去り死事件 (ちくま新書)
ルポ虐待 大阪二児置き去り死事件 (ちくま新書)
杉山春
907円
二〇一〇年夏、三歳の女児と一歳九カ月の男児の死体が、大阪市内のマンションで発見された。子どもたちは猛暑の中、服を脱ぎ、重なるようにして死んでいた。母親は、風俗店のマットヘルス嬢。子どもを放置して男と遊び回り、その様子をSNSで紹介していた…。なぜ幼い二人は命を落とさなければならなかったのか。それは母親一人の罪なのか。事件の経緯を追いかけ、母親の人生をたどることから、幼児虐待のメカニズムを分析する。現代の奈落に落ちた母子の悲劇をとおして、女性の貧困を問う渾身のルポルタージュ。
二〇一〇年夏、三歳の女児と一歳九カ月の男児の死体が、大阪市内のマンションで発見された。子どもたちは猛暑の中、服を脱ぎ、重なるようにして死んでいた。母親は、風俗店のマットヘルス嬢。子どもを放置して男と遊び回り、その様子をSNSで紹介していた…。なぜ幼い二人は命を落とさなければならなかったのか。それは母親一人の罪なのか。事件の経緯を追いかけ、母親の人生をたどることから、幼児虐待のメカニズムを分析する。現代の奈落に落ちた母子の悲劇をとおして、女性の貧困を問う渾身のルポルタージュ。
家族幻想 「ひきこもり」から問う (ちくま新書)
家族幻想 「ひきこもり」から問う (ちくま新書)
杉山春
864円
現在、「ひきこもり」と呼ばれる人々の数は、およそ七〇万人、親や社会の価値観でみずからを束縛した挙句、羞恥心と屈辱にまみれざるをえなかった彼・彼女たち。ひとたび密室に閉じこもれば、家庭は激しい暴力に満ちた世界へと一変することも…。現代を支配する息苦しさの象徴である「ひきこもり」を長年にわたった取材し、絶望の底で現代の辛苦に寄り添ってきた著者が、“家族の絆”という神話に巨大な疑問符をつきつける。閉ざされた内奥に目を凝らし、現代の希望を探しもとめる圧倒的なノンフィクション。
現在、「ひきこもり」と呼ばれる人々の数は、およそ七〇万人、親や社会の価値観でみずからを束縛した挙句、羞恥心と屈辱にまみれざるをえなかった彼・彼女たち。ひとたび密室に閉じこもれば、家庭は激しい暴力に満ちた世界へと一変することも…。現代を支配する息苦しさの象徴である「ひきこもり」を長年にわたった取材し、絶望の底で現代の辛苦に寄り添ってきた著者が、“家族の絆”という神話に巨大な疑問符をつきつける。閉ざされた内奥に目を凝らし、現代の希望を探しもとめる圧倒的なノンフィクション。
ネグレクト 育児放棄ー真奈ちゃんはなぜ死んだか (小学館文庫)
ネグレクト 育児放棄ー真奈ちゃんはなぜ死んだか (小学館文庫)
杉山春
596円
ネグレクト(neglect)育児放棄。子供に食事を満足に与えなかったり、病気やけがを放置したり、長期間入浴させないなど保護者としての責任を放棄する行為。二〇〇〇年十二月一〇日、愛知県名古屋市近郊のベッドタウンで、三歳になったばかりの女の子が段ボールの中に入れられたまま、ほとんど食事も与えられずにミイラのような状態で亡くなった。両親はともに二一歳の夫婦だった。なぜ両親は女の子を死に至らしめたのか、女の子はなぜ救い出されなかったのか。三年半を超える取材を通じてその深層に迫った事件ルポルタージュ。第十一回小学館ノンフィクション大賞受賞作。
ネグレクト(neglect)育児放棄。子供に食事を満足に与えなかったり、病気やけがを放置したり、長期間入浴させないなど保護者としての責任を放棄する行為。二〇〇〇年十二月一〇日、愛知県名古屋市近郊のベッドタウンで、三歳になったばかりの女の子が段ボールの中に入れられたまま、ほとんど食事も与えられずにミイラのような状態で亡くなった。両親はともに二一歳の夫婦だった。なぜ両親は女の子を死に至らしめたのか、女の子はなぜ救い出されなかったのか。三年半を超える取材を通じてその深層に迫った事件ルポルタージュ。第十一回小学館ノンフィクション大賞受賞作。

あなたにおすすめ