メディア個別 トランスジェンダーの子、将来どうなる? | もしも我が子がトランスジェンダーだったら | ママの知りたいが集まるアンテナ「ママテナ」
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トランスジェンダーの子、将来どうなる?

第3回 もしも我が子がトランスジェンダーだったら
「身体」と「心」の性が一致しないトランスジェンダー。もし我が子が当事者であれば、この子は将来どのように生きていくのだろうかと心配もするはずです。また、トランスジェンダーの中には、ホルモン療法や性別適合手術などで、「身体」を「心」の性別にあわせる選択を望む人もいます。

親としては、健康な体に見えるのにも関わらずメスを入れたり、ホルモン剤の投与を受けたりすることには抵抗を感じるかもしれません。

仮に我が子がトランスジェンダーだったら、その子の将来について、親はどう捉えたらいいのでしょうか。自身もトランスジェンダーの当事者で、LGBT(性的少数者)の若者を支援している、遠藤まめたさんに聞きました。

●二次性徴を止める薬で「考える時間」を確保するのもアリ

小学生の高学年から中学生頃まで続く思春期は、身体つきに著しい変化が生じる二次性徴にもあたり、トランスジェンダーの子どもにとっては苦悩を抱きやすい時期でもあります。

そこで、最近はこのような二次性徴に伴う強烈な違和感を緩和させるための『二次性徴抑制ホルモン』による治療も国内で始まっていると言います。

「『胸が出てきたらとてつもなく嫌だ』とか『男性っぽい声になるのが耐えられない』という子は、身体の変化にともないメンタルヘルスの状態が悪化しがちです。『二次性徴抑制ホルモン』を使用すれば、そうした身体の変化を一時的に止めることができます。
トランスジェンダーの人が行うホルモン療法といえば、15歳以上を対象として、心の性にあわせた性ホルモン(男性ホルモンや女性ホルモン)を定期的に投与し、望みの性別らしい身体つきを手に入れるというものがありますが、一度起きた変化を元には戻しにくい側面があります。一方で、『二次性徴抑制ホルモン』は副作用も少なく、投与をやめれば元通り通常の二次性徴が起こります。さらに、15歳未満でも使用することができます。この療法によって、二次性徴による苦悩を劇的に減らし、本人のメンタルヘルスが良好な状態で、将来自分がどのような性別で生きたいのかを改めて模索してもらうための余裕を持たせることができるのです」

トランスジェンダーが希望どおりの性別で生きていくためには、必ずしもホルモン療法や性別適合手術は必要ではなく、服装や周囲からの扱われ方、名前などを変えることで、本人が安心して生きていけるケースもあるのだとか。

「身体を変えなくても、自分が望む性別で就職して、好きな人と暮らしているトランスジェンダーたちだって、たくさんいます。そういう人が身近にいないと、子どもたちは落ち着いて自分の将来を思い描くことが難しいですよね。追い詰められた挙句、二次性徴に思い悩む子どもの中には、誰に相談したら良いのか分からず、ネットなどでいきなり安全性が保障されていない男性ホルモン剤や女性ホルモン剤を購入して使用してしまう例もあります。医師の指導や定期的な血液検査なしに、ひとりで素状の分からない薬を使うことは、たいへん危険なことです。そんなときには身体への負担を減らす方法をまずは考えなくてはいけないだろうし、なによりトランスジェンダーとして生きている人たちの実際の声をたくさん聞ける環境を持てるようになることが、彼らの絶望感を和らげるのではないかと思います」

トランスジェンダーの子、将来どうなる?

●性別適合手術は親の手を離れてから子どもが自分で考えるべき

トランスジェンダーの中には、性別適合手術などの外科的手術を希望する人もいます。女性から男性へのトランスジェンダー(FTM:Female to Male)の場合は乳腺や子宮や卵巣、などを、男性から女性へのトランスジェンダー(MTF:Male to Female)は陰茎や精巣を切除するなどの手術があります。

性別適合手術自体は20歳から受けられるとあって、ママテナ世代にとってはまだ少し先のことではありますが、遠藤さんは「手術は子どもがきちんと自立し、親の手を離れてから考えるべき話だ」と主張します。

「まずは子どもが自分で一生懸命調べるべきです。なので、親があれこれ調べたり、手術費について苦悩したりしている状況では、ひとまずブレーキをかけても良いかもしれません。日本では性別適合のための医療資源はとても乏しく、正確な情報もあまり多くありません。結局のところ手術を受けるためには、様々なリスクや医学的知識を当事者本人が調べないといけないのです」

タイなど海外で手術を受ける人もいますが、その場合にも、日本に戻ってきて万が一トラブルが生じた時に、どこの病院に駆け込めば良いかなども考えておく必要があると遠藤さん。

「日本にも病院はありますが、順番待ちや手術件数、費用の面などで、それぞれメリット・デメリットがある。そういうことを、子ども本人が調べ、意思決定できるようになってからでないと、手術を選択する時期とは言えないのではないでしょうか」

手術を希望する人の中には、手術がゴールになってしまい、その後の人生設計ができていない人もいるそう。

「手術をした後の人生の方が、ずっと長い。その後にだって考えなきゃいけないことがいっぱいあるわけです。最近では手術費用を親が出すケースも結構ありますが、私は原則、当事者の子ども自身が貯めたお金で手術をしたほうがいいと思っています。お金を貯めていく中で、社会で揉まれてどうやって自分が生きていくべきかを考えることにもつながるはずです。性別の悩みだけでいっぱいになっているときには気が付けないことが、社会で揉まれる中で表れてくる。こういうプロセスも無駄にはならないように思います」

手術をして戸籍や法律上の性別を変えても、その後に幸せになれなかったら意味がないことだと遠藤さんは言います。トランスジェンダーとして生きていくと聞けば、すぐ性別適合手術と連想してしまう親も多いかもしれませんが、必ずしもイコール手術ではありません。

仕事や夢、だれとどうやって生きていくのか、周りとどうやって関わっていくのかなど、当事者である子ども本人が考えなくてはいけないことは、たくさんあるようです。自立した子どもがその答えを出した先に、ようやく手術をするかどうかの決断かもしれません。こうしたプロセスを家族が知っておくことで、もし子どもが当事者だったとき、間接的にサポートすることができるのではないでしょうか。

(構成・文:末吉陽子/やじろべえ)

お話をお聞きした人

遠藤まめた
遠藤まめた
1987年生まれ横浜育ち。トランスジェンダー当としての自らの体験をきっかけに10代後半よりLGBTの若者支援をテーマに活動。著書に『先生と親のためのLGBTガイド もしあなたがカミングアウトされたなら』(合同出版、2016年)ほか。
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