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【医師監修】妊婦さんが氷を食べずにいられない氷食症って?

第5154回 ベビーカレンダー
この記事では氷食症について、医師監修のもと解説します。氷食症そのものが、妊娠経過や赤ちゃんに直接影響するとはいえませんが、氷食症を起こすきっかけとなる貧血に対する治療や、氷食症を長引かせることで起こるお母さんの体への影響に対しても治療は必要です。

妊娠をしてから無性に氷を食べたくなる症状に悩んだことのある妊婦さんもいるのではないでしょうか。今回は、氷を食べずにいられない氷食症の原因や妊娠経過、赤ちゃんに影響があるのかについてお話しします。

妊婦さんが氷を食べずにいられない氷食症とは?

氷食症とは、氷や凍らせたものを食べずにいられない異食症の1つです。異食症とは、栄養にならないものを毎日持続して1カ月以上食べる病気です。通常、異食症は子どもに多いですが、思春期以降の成人や妊娠中に見られることもあり、医学的に危険なほど栄養にならないものを摂取する場合にのみ異食症と診断します。


妊娠中の異食症として代表的なものが氷食症です。食べる氷の量に個人差はありますが、製氷皿1皿以上を毎日食べ続ける場合を氷食症と診断します。これは、暑い季節に毎日かき氷やアイスを食べている場合や、つわりで水分を摂れないために氷の欠片だけを食べているという場合には、妊娠経過が順調で医学的に危険でなければ氷食症と診断しません。


妊娠中に氷食症の起こる最も多い原因は、体内の鉄分が不足する鉄欠乏性貧血と関係しています。妊娠によって起こる主な貧血は鉄欠乏性貧血ですが、なぜ、鉄欠乏性貧血が氷食症を引き起こすのかは十分に解明されていません。脳神経細胞内の鉄含有酵素の鉄分不足が体温調節をコントロールできず、口の中の熱感を取り除くために氷を食べる説や、妊娠によって口腔粘膜や味蕾の変化が起こり氷を食べる説があります。


妊娠中や授乳期の鉄欠乏性貧血の起こりやすい女性に、一時的に食事や味覚のパターンの変化として氷食症は出現するため、まれなものではありませんが不明な部分も多い病気です。

妊娠中の貧血と氷食症 いつわかる?

貧血とは、血液中の赤血球や赤血球中にあるヘモグロビンが正常値より少ない状態をいいます。急に立ち上がったり、立ち続けることでめまいや立ちくらみが起こるのは、一時的な起立性低血圧によるもので、貧血とは異なります。めまいや立ちくらみなど似た症状が起きるため一般的に間違えられやすいですが、貧血と起立性低血圧は全く違う病気です。貧血の有無は血液検査をすればわかります。


妊婦健診では、一般的に妊娠初期(目安:妊娠12週未満)、中期(目安:妊娠24~30週ごろ)、後期(目安:妊娠36週前後)の計3回、血液検査をおこないます。妊婦さんの場合、ヘモグロビン濃度11.0g/dl以下、ヘマトクリット値33.0%以下のときに貧血と診断し、食事療法や鉄剤の投与などの必要な治療をおこないます。


妊娠初期(妊娠16週ごろまで)は、つわりによって十分な食事を摂れないことで、鉄分が不足して貧血が起こりやすい時期です。妊娠前の月経時の血液量が多い(過多月経)ために日常的に鉄分不足があった女性が妊娠した場合は、妊娠初期から鉄欠乏性貧血が起こることがあります。


妊娠中期以降(特に妊娠20週以降~)は、お母さんの体の循環血液量が増加することにより血液が薄まった状態で、赤血球を作るために必要な鉄分や葉酸の必要量も増すために、生理的に貧血が起こりやすい時期となります。


妊婦健診へ定期的に通い血液検査を受けて、鉄欠乏性貧血と診断された場合に適切な治療を受けていれば、氷食症になることは防ぐことができますが、貧血の重症度と氷食症の程度は必ずしも関係しているわけではありません。


鉄欠乏性貧血が原因で氷食症となっている場合は、鉄剤を内服して1〜2カ月経過すると氷を食べずにいられない生活から抜け出せます。貧血の改善をしても氷を食べずにいられない生活が続く、あるいは鉄欠乏性貧血がないにも関わらず氷を食べずにいられないという場合は、家庭や職場などの日常生活に何らかの強いストレスを感じて、妊婦さん本人が自分の食事のコントロールができなくなっている可能性があります。


もし、毎日氷を食べずにいられない状況であれば、妊婦健診のときに医師や助産師に相談しましょう。血液検査の結果で貧血でなかったとしても「毎日氷を食べずにいられない」「自分で氷を食べるのを止められない」という症状に隠れた理由を見つけられるかもしれません。

氷食症は妊娠経過や赤ちゃんに影響する?

氷食症そのものが、妊娠経過や赤ちゃんに直接影響するとはいえませんが、氷食症を起こすきっかけとなる貧血に対する治療は必要です。また、氷食症を長引かせることで起こるお母さんの体への影響に対しても治療は必要です。


妊娠中の貧血が赤ちゃんに与える影響として、胎児発育不全(胎児の発育が標準より遅いあるいは停止する状態)や低出生体重児(出生時の体重が2,500g未満)、早産(妊娠22週0日~36週6日までの出産)の頻度が高いと報告があるため、妊婦の貧血に対しては適切な対応と治療を受けましょう。


妊娠中の貧血は、お母さんの体の生理的な変化のため、鉄を多く含む食材をたくさん摂ることで予防できる十分な根拠は今のところありません。また、貧血のない妊婦さんが鉄分を含むサプリメントを摂取しても生理的な変化を打ち消すような予防にはなりません。サプリメントはお薬ではなく食品ですが、鉄分を摂りすぎることで胃腸の刺激となることもあります。鉄分を含むサプリメントを利用したい場合は、自己判断せずに担当医に相談しましょう。


妊娠中の食生活を豊かにすることや処方された鉄剤を内服することは、結果的に赤ちゃんの成長へとつながります。助産師や栄養士など専門職へ相談することで、貧血を改善することは可能ですので、まずは普段の食事内容を見直すことから始めましょう。


氷食症を長引かせることで、偏食や過食によって他の食品を摂る量が減り、さらに鉄分不足となることがあります。また、氷ばかり食べることで胃腸の機能が低下したり、体温の調節にエネルギーを使うあまり妊婦さん本人の体力を消耗する可能性もあります。


大量の氷を食べることによって、歯が欠けたり、顎関節症に悩むケースもあります。妊婦健診で貧血と診断されなくても、氷を食べずにいられないという状況であれば、妊婦健診のときに医師や助産師へ相談しましょう。

まとめ

氷食症、異食症という聞き慣れない言葉に不安を感じるかもしれませんが、妊娠中に氷食症は起こる可能性のあるものです。妊婦さんが氷を食べずにいられない状況になってしまったら、妊婦健診のときに医師や助産師に相談しましょう。


■参考文献
・産婦人科診療ガイドライン 産科編2017 日本産婦人科学会/日本産婦人科医会

・エビデンスに基づく助産ガイドライン妊娠・分娩期2016 日本助産学会
・精神疾患の分類と診断の手引き第5版(DSM-5)河上智美ら 鉄欠乏と異食症の関係―第1報思春期の鉄欠乏性貧血における異食症の実態―.小児保健研究70:472―478,2011

・氷食症に関する文献的考察 Pagophagia: The Literature Review
・日本産婦人科・新生児血液学会


監修者:医師 おおたレディースクリニック院長 太田 篤之 先生

順天堂大学卒後、派遣病院勤務を経て、平成22年より順天堂静岡病院周産期センター准教授就任。退職後、平成24年8月より祖父の代から続いている「おおたレディースクリニック」院長に就任し現在に至る。

著者:助産師 古谷真紀

一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダー

大学病院勤務を経て、2015年より現職。妊娠中や産後の女性のココロとカラダの相談、ママパパ&赤ちゃんのちょっと気になるコトに日々応えています。

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