“いい子”が犯罪者に…。そこまで追いつめたものとは?

第2回 いい子がだった…が、なぜ犯罪を犯したのか?
日々のニュースから流れてくる事件の数々。そんななかで、犯罪者が過去は“いい子だった”という言葉にハッとさせられることも多い。また、身近でも、“あのいい子が?”と、いい子がまさかの事件を起こすなどということを目の当たりにすることもあるのではないでしょうか? いい子が犯罪を犯すまでに追いつめたものとは? そこで、そのようなケースについて駿河台大学心理学部教授の小俣謙二先生に、お話を伺いました。

「犯罪については、一慨にこれが理由、原因ということは言えません。子どもの性格、環境などはそれぞれ様々で、その積み重ねなのです。しかし、実際に“いい子だった子が犯罪を犯す”というケースは、確かに起きています。いい子がゆえに、見落としがちなケースについてお話ししたいと思います」(小俣先生 以下同)

●“いい子だから”と、安心しきって放任にならないように要注意!

「いい子の場合、いい意味でも、悪い意味でも、安心しきってしまいますね。それが、時には“放任”になってしまったり、“甘やかし”になってしまうこともあるのです。そうすると、例えばいい子が何かSOSサインを出していても気付いてやれなかったり、逆にいい子の素行に異変が生じてしても“ウチの子はいい子だから大丈夫”と、安心しきって気付かなかったりして、何か問題が起こってはじめて気づくということもあるのです」

また、“いい子”だから故に、親御さんが追い込んでしまうこともよくあることだという。

「親御さんはわが子が“いい子”“であれば、どんどん期待します。そうすると、“いい子”は親の期待に応えようとプレッシャーを感じながら必死にがんばります。何か悩みを抱えていても、弱音を吐きたいことがあっても親を心配させまいと笑顔を作ります。しかし、そんな無理は当然ずっと続かないわけで、そのストレスがあるとき一気に爆発してしまうというケースもあるのです」

さらに、挫折などが大きなきっかけになることも多いという。

「ずっと親や周囲の期待に応えてきた子が、失敗や挫折を機に犯罪に手を染めてしまうケースもあります。子どもが期待した結果を出さなかったときに“何やってるんだ!”“もっとできる子だと思ってた”“お前はダメだな…”などと、これまでの頑張りを頭ごなしに否定したり、自尊心を傷つけたりし続けてしまえば、“こんなにがんばってきたのに、自分は何だったんだ…”と、自暴自棄に陥ってしまいかねません」

“いい子”が犯罪者に…。追いつめたものとは?

●わが子のいい面も悪い面も、すべてを受け入れて愛す

もちろん、期待された子、挫折経験のある子のほとんどが犯罪者になるわけではない。では、その分かれ目とは?

「親御さんが可愛いわが子に期待するのは当然のことですし、失敗や挫折のない子もいませんね。つまり、分かれ目は親や周囲の対応がどうだったか? ということなのです。例えば、いい時ばかり、いい面ばかりを認めて褒めて、期待通りにいかなかったときは突き放したり、見捨てられたら子どもはどうなるでしょうか? 当然悲しく、つらく、逃げ場を失ってしまいます。逆に、どんな状況に陥ったとしても、自分を受け入れてくれる場所さえあれば、安心してまた自信を持って生きていけるのです。どうか、その子のいい面も悪い面も、すべてを受け入れて、その子のありのままを認め愛してください」

“いい子”と言えども、子どもはまだまだ不安定で未熟。安心しきってしまうのではなく、信頼はしつつも親としてしっかり子どもの動向に注意を払う。そして、何が起ころうともすべてを受けとめ、愛を注いでやることが子どもにとって何よりの支えとなるようです。
(構成・文/横田裕美子)

お話を伺った人

小俣謙二先生
小俣謙二
駿河台大学心理学部教授
犯罪問題(とくに暴力や攻撃、犯罪被害者問 題、防犯活動など)を犯罪心理学と社会心 理学の両面から研究。また、子ども部屋問題や 高層住宅問題など、居住環境についても研究 している。日本犯罪心理学会理事、同編集委 員、日本環境心理学会会長、犯罪や地域の 防犯活動に関する講演活動、犯罪に関する新 聞、TVニュースなどマスメディアのコメントなど多 方面で活躍。
犯罪問題(とくに暴力や攻撃、犯罪被害者問 題、防犯活動など)を犯罪心理学と社会心 理学の両面から研究。また、子ども部屋問題や 高層住宅問題など、居住環境についても研究 している。日本犯罪心理学会理事、同編集委 員、日本環境心理学会会長、犯罪や地域の 防犯活動に関する講演活動、犯罪に関する新 聞、TVニュースなどマスメディアのコメントなど多 方面で活躍。