人だと何歳?犬の年齢と成長に応じたケア方法まとめ

第4182回 はじめてライフ
人の暮らしに潤いと癒しを与えてくれるペットは、「家族の一員」ともいわれます。しかし、人間よりもはるかに寿命が短く、いつかは別れのときが来てしまうものです。「生涯を幸せに過ごすことができる環境をつくる」ということは、飼い主の使命といっても過言ではありません。今回は、犬の人間換算年齢と成長過程、年齢別のよりよい環境づくりについて解説します。適切なお世話をして、愛犬との有意義な時間を過ごせるようにしましょう。

年齢でいうと何歳くらい?犬のサイズごとに紹介

犬は人間よりも成長が早く、あっという間に成長していきます。また、犬種によって大型・中型・小型に分類され、体の大きさごとに成長にも差が生まれるのです。まずは、サイズ分類による人間換算年齢について紹介します。

大型犬の場合

大型犬と呼ばれる犬種は、体重20kg以上、体高60cm以上が目安とされています。
体が大きい大型犬は1歳半には体の基礎ができあがり、成犬と同じ大きさに成長します。しかし、その見た目に反して、年齢的な成長は遅いのが特徴です。
生後3カ月で人間換算年齢は2歳相当といわれ、生後1年では人間の12歳相当になります。小型犬は生後1年で人間の18歳相当なので、6年分遅いといえるでしょう。
その後、成犬になると老化スピードが早くなり、あっという間に老犬と呼ばれる年齢に達します。2歳では人間の19歳、3歳では人間の26歳と、1年経つごとに人間の7歳分の歳を取るのです。
小型犬が5歳のときに人間年齢で36歳なのに対して、大型犬は44歳と、大きく年齢差が出てきます。そのため、大型犬は5~6歳頃から老化が始まるとされています。1年で7歳分ずつ歳を取り続けると、11歳を迎える頃には人間の82歳相当です。日本人男性の平均寿命80.75歳(2017年発表)を超えてしまうのがわかります。

中型犬・小型犬の場合

小型犬は体重10kg以下、体高40cm以下とされていて、なかでも小さい犬種は超小型犬といわれることもあります。中型犬は体重10~25kg以下、体高40~60cm程度が目安なため、小型犬と大型犬の中間サイズになります。
一般的に、小型・中型犬の成長期は生後10カ月~12カ月(1年)です。大型犬に比べると、体の基礎ができあがるまでの期間が短いことがわかるでしょう。人間換算年齢の進み方も大型犬とは逆です。成犬になるまでの成長は早いものの、その後の老化はゆっくりと進んでいきます。
生後3ヵ月で人間の5歳に相当し、1歳では17~18歳、2歳で24歳ほどになります。その後、1年経つごとに人間の4歳分が加算されていくため、5歳で人間の36歳に相当します。大型犬が5歳で人間の44歳相当だったのに対して、小型・中型犬は7歳で人間の44歳です。
この時点で、大型犬よりも2年分ほど、成長が遅くなっています。さらに、1年で7歳分進む大型犬と、1年で4歳分進む小型・中型犬では、その差はどんどん開いていきます。これらのことから、小型・中型犬の老化は7歳頃から始まるとされているのです。

幼犬や成犬の区分は?成長と老いによる変化には何があるのか

犬は成長していくにあたって、幼犬・成犬・老犬と分けられます。飼い犬の成長に合う環境づくりのためにも、その区分の基準を知ることが大切です。それに加えて、老化によって体に現れる変化や症状も併せて紹介していきます。

幼犬から大人になるまでの変化

犬は、体の大きさごとの加齢の進み具合によって、成長スピードが異なります。小型・中型・大型犬それぞれの、成長期を終えるタイミングや、老犬になる年齢を覚えておきましょう。
小型犬の場合は、おおよその目安として「生後10カ月」で成犬になります。1歳で人間の17~18歳に相当することからもわかるように、成長期は1歳未満で終わるのです。基本的なしつけなども、この頃までにしておくことが推奨されています。成犬になってからの成長はゆっくりなので、「11歳」頃に人間の60歳相当を迎え、老犬と区分されるようになります。
中型犬は生後4歳頃までは、小型犬とほぼ同じように加齢していくといわれています。しかし、1歳を迎えた中型犬は人間の16歳相当とされ、小型犬よりも少々成長が遅れるのです。ですから、中型犬は「生後12カ月」で成犬になるとされています。4歳になると人間の33歳となり、5歳で38歳、6歳で43歳というように、小型犬よりも加齢が進んでいきます。そのため、人間の60歳相当になる「9歳半」頃に老犬と呼ばれるようになります。
大型犬は、成犬までの成長がゆるやかなので、「1歳半」で人間の16歳相当になり、成犬といわれます。その後、人間の60歳相当である「8歳」を境に、老犬という扱いになるのです。
犬の成長区分を人間年齢で表すと、0~16歳が幼犬、17歳から成犬、45歳以降は老化が始まり60歳で老犬になるといえるでしょう。

老いによって出てくる変化

人間年齢の44歳を迎えた頃から、犬の老化は始まります。老化が始まると体にさまざまな症状をもたらしますので、変化を見逃さないようにしましょう。
まず、代表的な老化の傾向として、寝ている時間が増えていきます。犬は好奇心が旺盛で、動くものや気に入ったおもちゃなどに興味を示すものです。しかし、老化が始まると遊びよりも眠ることを優先しやすくなります。昼間も眠っていることが多いと感じたら、愛犬の老化を疑いましょう。
また、筋力の低下や体の痛みを感じ始めます。段差の上り下りを嫌がるようになる、散歩に行く時間が短くなるなど、足腰を使わなくなったときにも老化が表れています。この場合、老化以外の原因があって動けなくなっている可能性もあるので、老化なのか病気なのか毎日の観察が必要です。
さらに、愛犬の食事に関する変化も、老化のサインかもしれません。急にご飯を残すようになる、反対に食欲が旺盛になる、食事の好みが変わるなど、今までとは異なる点に要注意です。一般的に、食欲の低下は運動量が減っていることが主な原因と考えられます。動かなければお腹は減りませんし、胃酸などの消化液の分泌量も減少します。ところが、ホルモンの病気の疑いや、内臓機能が低下している可能性も少なくありません。急激な変化がみられるときは、獣医師への相談も視野に入れましょう。
そのほか、歯周病になりやすくなる、目ヤニが増える、臭いが変わるなども老化が原因といえます。毎日の変化をチェックしてあげることが愛犬の長寿につながります。

犬の年齢に合わせた適切な世話とは

犬の年齢区分ごとに、「適切」といえるお世話の仕方にも違いが出ます。幼犬と老犬が、同じ食事・同じ散歩量では、体への負担も大きくなってしまうでしょう。愛犬の成長によって必要な世話方法を知っておくことが大切です。

幼犬の場合

健康な体つくりと、基本的なしつけをする成長期には、栄養満点な食事やトレーニングが必要になります。生後3カ月までのパピー(子犬)には、1日に必要な食事量を朝・昼・晩の3回に分けて食べさせます。このとき、お湯でふやかした子犬用のドッグフードを与えましょう。消化器官が未発達なので、いきなり固いドッグフードをあげても上手に消化できません。生後3カ月以降~半年頃までは、固いドッグフードとふやかしたドッグフードを、「半々」に混ぜて少しずつ固さに慣らしていきます。そして、生後半年~1年を目安に成犬用のドッグフードに移行していきましょう。
また、メスは生後6~7カ月頃から発情(ヒート)するようになり、オスはマーキングが始まります。犬の繁殖は1歳半頃から可能ですが、繁殖をさせない場合には早めの避妊・去勢手術を検討しましょう。メス・オス共に避妊・去勢手術をすると、性別特有の病気を防ぐことができ、その結果として寿命が延びることも考えられます。その反面、全身麻酔で行われるため、麻酔から目覚めない、死亡する可能性もあるといったデメリットも含まれます。しっかりと考えて判断しましょう。
そして、成犬になってからだと覚えられないことも多くなりますので、基本的なしつけを行うのもこの時期が最適です。まず、トイレトレーニング・食事のマナー・「待て」「お座り」などで飼い主の言葉を理解できるようにします。並行して、甘噛みや他の犬との接し方、留守番ができるように教えていきましょう。

成犬の場合

成犬の食事は、成犬用のドッグフードを朝・晩の2回に分けて与えるようになります。毎日の食事にプラスしておやつをあげる人もいますが、かわいいからといって与えすぎには要注意です。肥満は犬にとって「万病のもと」だということを忘れてはいけません。贅肉は増えても、足腰は強くなれませんから、運動が困難になります。足の筋力低下や、体重による関節への負担も大きくなりますので、適量を適度にあげましょう。おやつと食事のバランスを重視し、低カロリーなものを選ぶことも大切です。
また、2~3歳頃に反抗期を迎える犬もいます。パピーのときにしっかりしつけても、言うことを聞かなくなることが少なくありません。この場合は、再度しつけ直す必要があります。こうすることで、改めて飼い主の優先度が高くなり、主従関係が確立されていきます。あくまでも、「自分より飼い主が上位」なのだと教えることも重要なしつけの1つです。
なお、犬には法律で義務付けられている予防接種があります。犬だけでなく、人にも感染する「狂犬病」のワクチンは年に1回、必ず受けなくてはいけません。治療法のない狂犬病の主な感染源は「犬」といわれています。感染した場合、100%死亡する大変危険な病気ですから、通知が届いたら所定の方法できちんと摂取させましょう。これに加えて、任意で「摂取を推奨」されているワクチンも、可能な限り摂取しておきましょう。2~10種類の混合ワクチンがありますので、最寄りの動物病院で確認してみてください。

老犬の場合

人間の60歳という高齢を迎えると、老化は目に見えて表れます。
老化によって歯が抜けると、成犬用の固いドッグフードをだんだん食べられなくなってしまいます。そのため、老犬用のやわらかめに作られているドッグフードに変えてあげたり、お湯でふやかしたりして与えます。運動量が減っていくので、消化がしやすく、低カロリーなものにするとなおよしです。缶詰タイプでペースト状のものも販売されていますので、愛犬の様子を見ながら食べやすいものを選んであげましょう。
また、優しくブラッシングを行うことで、抜け毛をなくし清潔に保つこともできますし、マッサージ効果も得られます。皮膚を刺激すると、新陳代謝を活発にする効果も期待できます。愛犬の健康のためにも、ぜひ日課に取り入れましょう。ちなみに、自力で歩けなくなった老犬の場合でも、家にこもっているよりも、外で日光浴させてあげると免疫力の向上につながります。抱っこやカートなどで連れ出してあげるとよいでしょう。
老犬は、加齢によって抵抗力が衰えてしまい、風邪などを引きやすくなることも考えられます。シャンプーの回数を減らし、するときにはしっかりと乾かしてあげましょう。ドライシャンプーや蒸しタオルで拭くだけでも、ケアとしては充分です。
さらに、目ヤニやよだれも出やすくなるので、こまめに取ることも忘れてはいけません。カピカピに固まると取りにくくなりますし、無理矢理こすると痛みを伴います。目ヤニが増えると視界が悪くなり、歩行に支障をきたすこともあるので、できれば毎日見てあげましょう。そして、自身での体温調整がしにくくもなります。留守にするときは、冷暖房設備で室温を一定に保つなど、 温度調整にも気を配ることが大切です。

年齢に合わせた世話で犬を幸せにしよう

人間に比べ、犬は寿命が短い生き物です。人が過ごす1年は、犬にとって4~7年とされています。そのため、犬の一生は、人間が思っているよりもあっという間に過ぎてしまうのです。大切な家族であり、愛するペットだからこそ、健康に気づかい、毎日の変化を見逃さないようにしましょう。
また、犬の年齢ごとに適した環境や、望ましいお世話の仕方は異なります。愛犬にとって、そのときどきで過ごしやすい環境を整えてあげることが、飼い主の重要な役目なのです。適切なお世話は、長寿への第一歩です。幼犬から成犬、老犬へと歳を重ねるとともに、愛犬に合ったお世話の方法を考えなくてはいけません。
飼い主がしっかりと考え、行動することで、愛犬は安心して楽しい毎日を過ごしていくことができます。1日でも長く、愛犬との幸せな時間を過ごすために、年齢によるケア方法をきちんと把握し、役立てていきましょう。