【医師監修】妊婦さんは「馬刺し」NG!母子感染のリスクとは

【医師監修】妊婦さんは「馬刺し」NG!母子感染のリスクとは

この記事では妊娠中の馬刺しについて、医師監修のもと解説します。妊婦さんの栄養摂取に役立つ馬刺しですが、生肉はトキソプラズマやリステリア菌などおなかの赤ちゃんに悪影響を及ぼすリスクを持っています。馬刺しを食べるときには、調理法などに細心の注意を持つようにしましょう。

妊娠中はお母さんの健康管理も大切ですが、おなかの赤ちゃんを考えた食生活も重要となります。元気な赤ちゃんを産むためには、バランスの取れた食事でおなかの赤ちゃんに十分な栄養を届ける必要がある一方、赤ちゃんのリスクとなるような食べ物の摂取を避けることもポイントです。控えるべき食べ物の1つに生ものが挙げられますが、馬刺しも例外ではありません。そこで、妊婦さんが馬刺しを食べてはいけない理由について解説します。

妊婦さんは厳禁? なぜ妊婦さんは馬刺しを食べてはいけないのか

妊娠中は、特にさまざまな食べ物からバランス良く栄養を摂取することが大切です。ただし、おなかの赤ちゃんに悪い影響を与える食べ物の摂取については控えなければいけません。そして、馬刺しも食べてはいけない食品の1つです。馬刺しが妊婦さんにとって食べてはいけない食べ物である理由は、馬刺しにトキソプラズマやリステリア菌といった有害な微生物が含まれている可能性があるからです。

トキソプラズマとは、人や動物などに寄生する原虫で、ニワトリ、豚やヤギといった家畜などのほか、ペットとして飼われている動物などにも見られます。200 種類以上の哺乳類や鳥類などに感染し、特に猫への寄生が多い傾向です。日本国内では、およそ1~2割以上の人が感染していますが、ほとんどの場合、感染に気付かないことが通常です。

一方、リステリア菌は、正式には「リステリア・モノサイトゲネス」といい、動物の小腸や大腸などの消化管や河川水などに分布している細菌を指します。食べ物から感染した症例は年間で100万人あたり0.1~10人ほどとなっていて、把握されている範囲ではそれほど多い数ではありません。

ただし、妊娠中にトキソプラズマやリステリア菌の感染で、トキソプラズマ症やリステリア症を発症すると、胎盤やおなかの赤ちゃんにも感染して母子の健康に重篤な影響を与えることもあります。このため、赤ちゃんの感染リスクを回避するためにも、妊婦は馬刺しを食べてはいけないとされているのです。

馬刺しを食べてしまった場合のお母さんや赤ちゃんへの影響とは

有害な細菌や寄生虫による感染症のリスクを持つ馬刺しですが、健康な成人であればほとんどの場合、感染症を発症することはありません。感染初期に弱い発熱や倦怠感を覚えるなど軽度の風邪のような症状が見られることはあります。しかし、特に危険を感じるような症状は現れず、本人が気付かないままに日が過ぎてしまうことが一般的です。トキソプラズマ症であれば発症しても、数週間ほどで回復します。多くの場合、成人は感染経験があり、細菌などに負けない抗体を持っているからです。

しかし、妊娠中は免疫機能が低下しているため感染のリスクは高まります。特に、妊娠中の女性にとって初めての感染である場合には、胎児への感染リスクが高まるため注意が必要です。トキソプラズマやリステリア菌は体内に入った量が少ない場合であっても胎児に重篤な症状が出ることは少なくありません。

具体的な症状としては、たとえばお母さんが感染すると38~39度ほどの熱が出たり、頭痛や嘔吐などの症状が現れたりすることがあります。また、ひどい場合には、意識障害やけいれんが起こる可能性もあるので要注意です。さらに、感染症によって授かった子どもを流産してしまうこともあります。加えて、出産後、赤ちゃんが先天性トキソプラズマ症や精神発達障害、視覚障害を発症してしまうリスクもあるのです。先天性トキソプラズマ症になると、水頭や小眼球、網脈絡膜炎、肝臓肥大といった症状が見られるようになります。生まれてすぐに症状が見られない場合でも、遅発型であれば成人までに網脈絡膜炎や精神神経・運動障害などを起こす可能性もあるのです。

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