【実録】“SEX動画”でわが子の人生が狂わされる!

第2回 サイバー犯罪「セクストーション」から子どもを守る
「セクストーション」とは、「セックス(性的)」と「エクストーション(脅迫・ゆすり)」を合わせた造語で、その名の通り性的脅迫で、日本でも被害が徐々に増えている。裸の画像を撮って送ってしまったら、その画像をネタに脅されるのだが、どんなセクストーションの被害があるのか。メディアジャーナリストの渡辺真由子氏に具体的な事例を聞いた。

●セクストーションのきっかけとは?

大学生だったモエさん(仮名)は、初めてできた恋人に「ホテルに行こう」と誘われ、それ以来、デートの度に体を求められたという。デートでは必ずセックスをするようになり、会って最初に向かう場所はラブホテル。愛が感じられないセックスにモエさんは戸惑ったが、拒むと彼の機嫌が悪くなったという。

ある日いつものようにラブホテルに行くと、モエさんは彼から「セックスの場面を動画で撮影したい。1人でいる時に見たいから…」と頼まれたそう。交際経験が乏しいモエさんは、“みんなそういうことをしているのかな?”と思い、渋々了承。「“そこまで思ってくれているんだ”と思うと嬉しかったんです。当時は、自分のセックスがネットに流れるかもしれないという発想がなかったし、何らかの形で悪用される…なんて思いもしませんでした」(モエさん)

実録セクストーション

● 突然襲ってきた脅迫の恐怖

だが、彼と1年あまり付き合うと、モエさんには他に好きな人ができた。彼女が別れを告げると、彼は泣いてすがり、その上仕事の忙しさも重なってうつ病を発症。それ以来、おかしなメールがくるようになったという。

「交際中に自分が払ったお金を半分返してほしい」「HIVに感染して、あなたにうつしたかもしれない」彼から送られてくる恐怖メールをひたすら無視していたモエさんだったが、今度は怪しげな電話が…。モエさんが電話に出ると、「ビデオの販売会社です。あなたのセックスのシーンが写っているビデオを販売することになりました。あなたの名前を出していいですか。出せばその分、高く売れるのですが…」と言われたという。

● セクストーションが人生を蝕む

モエさんは錯乱状態になって抵抗したが、その件を放置しておいたところ、連絡は途絶えた。やがてモエさんは社会人となり、一人暮らしを始めた。4年ほど経過し、元彼のことはすっかり忘れていたが、突然会社宛に元彼から手紙が届いたという。

モエさんが恐る恐る封を開けると「セックスのビデオを売るので、許可してほしい」と書かれていて、モエさんのルックスやセックスの状況(あえぎ声の大きさや感じ方など)が項目別に採点されており、「70万円で売れます」とのこと。付き合っていたのは学生時代なので、就職先は知られていないはずだったが、モエさんには1つだけ心当たりがあった。それは就職情報サイトで、モエさんは、新卒者向けの企業紹介ページに先輩として登場、顔写真や名前、部署名、役職を公開していたのだ。勤務先が知られてしまった以上、元彼がいつやって来るかわからないので、会社を辞職。警察にも届けることに…。

今回の事例に限らず、性的な画像や動画を撮らせる女性は、「ごく一部のチャラチャラしている人だけではない」と渡辺氏は指摘する。被害女性の1つの特徴として、親からの愛情不足や孤独、自己評価が低いなどが挙げられるそうだ。将来、わが子をセクストーションの被害者にしないためにも、親は子どものうちから「いちばん大切なのはあなた」と言葉をかけ、寄り添い、愛情を注ぐことが必要なのかもしれない。

(取材・文/谷亜ヒロコ)

お話をうかがった人

渡辺真由子さん
渡辺真由子
メディアジャーナリスト 慶應義塾大学SFC研究所上席所員
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程を経て現職。元テレビ局報道記者。ネット時代の子どもを取り巻く「性」や「いじめ」などの人権問題を18年以上にわたり取材し、賢くSNSと付き合うノウハウを伝授。豊富な取材経験に基づく、子どもの心理分析に定評。
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程を経て現職。元テレビ局報道記者。ネット時代の子どもを取り巻く「性」や「いじめ」などの人権問題を18年以上にわたり取材し、賢くSNSと付き合うノウハウを伝授。豊富な取材経験に基づく、子どもの心理分析に定評。