ここまで深刻化! 小学校高学年の学級崩壊の驚くべき実態とは?

第1回 小学校高学年の深刻な学級崩壊。その実態とは?
連日、“いじめ”や“暴力”など、学校問題のニュースがあとをたちません。実は、そんななかで、“小学校の学級崩壊”が深刻化し、現場では悲鳴が上がっているそうです。その驚くべき実態とは? そこで、これまで多くの学級崩壊の立て直しに奔走してきた、白梅学園大学教授・増田修治先生にお話しを伺いました。

●小学校高学年の学級崩壊。授業中にトランプ? ボール遊び?

「学級崩壊とは、学級が集団教育の機能を果たせなくなってしまう状態のことで、いま全国的に問題になっています。各小学校1~2クラスは崩壊しているのが現状です。低学年の場合は、授業中に立ち歩いたり、先生にかまってほしくて授業を妨害したりと、まだ未熟がゆえの勝手な言動が連鎖的に広がって結果的に崩壊していくという感じです」(増田先生 以下同)

一方、高学年の学級崩壊はもっと深刻で、信じがたい状況になっているという。

「高学年の場合は、日ごろのストレス、学校への反発から確信犯的に荒らすケースがほとんどです。学級崩壊している高学年クラスの多くを見てきましたが、その状況は目を疑うものです。例えば6年生のクラスを見学したときは、先生一人がしゃべっていて、聞いているのは3~4人。あとの子たちは寝ていたり、教室の後ろでボール遊びをしていたり、ヘッドフォンで音楽を聴いていたり、トランプで遊んでいたり。マンガを読んでいる子も居ました」

さらに、こんな耳を疑うような事例も…。

「生徒が教室の窓から大量の砂を放り投げ、下の階の教師が窓から首を出すと、顔めがけてつばを吐きかけるという事例もありました。信じられないですよね? でも、こういうことが現実に起こっているのです。高学年の学級崩壊は、さまざまな複合的な要因があるのですが、大きく分けるとふたつの理由があります。もっとも大きい理由は、大人の本音と建前を子どもたちが見抜くようになってしまったことです」

深刻な小学校高学年の学級崩壊

●子どもたちは、大人たちの本音と建前を見抜いている!

今の子たちは情報社会のなかで生きているため、昔に比べて成熟度が高くなっているという。つまり、“もっと僕たちを真っ当に扱ってほしい”という心の叫びなのだ。

「例えば、よく学校では“みんな仲良く”という正論のスローガンを掲げて指導しますね。この言葉に子どもたちはなんとなく違和感を感じているのです。社会全体のなかで大人たちがそれを実行できず事件やトラブルを起こしていることを多くの情報によって今の子どもたちは知ってしまっている。つまり、建前で言っているということを見抜いているのです。それなのに、相変わらず教師は本音と建前を分けて権威と権力で押さえつける。そうしたら、反発するのも無理ないですね。運動会などの行事のあとに学級崩壊が加速するのもそこに原因があるのです」

つまり、今の子どもたちは、正論をぶつけるだけでは通用しないし、納得させられないという。子どもたちの言い分を聞いてやり、そこで真剣に話し合って建前との折り合いをどうつけていくかということを教えていかなければならないという。

「本音を言えば、世のなかは気の合う人ばかりじゃありませんね。だから、気の合う人、気の合わない人がいるのは仕方がない。しかし、社会に出たらそういう人とうまくやっていかなければならないのが現実。だから、そういう人とうまく距離をとったり、うまく協力するためにはどうしたらいいか? それを学ぶ場所が学校だと、納得いくように指導してやるのが教師の役目なのです。きちんと本音で向き合ってやれば、どんな荒れた学級でもみるみる変わっていきました」

●学校の授業がつまらない。授業の質が問われる現実。

もうひとつは、学びへのストレス。学びの有用性が感じられないことだという。

「これは、子どもたちをとりまく環境の変化と、それに対応できない学校に原因があります。今どきの小学生は、高学年になるとクラスの半数以上、都心の学校では8割が塾に通っています。つまり、ダブルスクールの生活に疲れ果てているうえに、学校の勉強はすでに塾で習った内容なので授業がつまらないのです。そうなると、学校の授業にはそんな子どもたちを惹きつける“授業の質”が求められるわけです。学ぶことの楽しさはもちろん、学びが人生の役に立つ実感や、世のなかを変えたり自分の周りを変えていく力をもっていることを教えなければ見向きもしません」

しかし、なぜこのような深刻な事態があちこちの学校で起こっているにもかかわらず、いじめや暴力問題のようには社会問題としてクローズアップされず、本格的な実態調査が成されたりもしないのだろうか?

「いじめや暴力の場合は、学校側としては原因が家庭教育にあるとしやすいのです。しかし、学級崩壊に関しては、学校の責任が大きいため言い逃れができないので公表したがらないのが現状です。しかし、ここまで深刻化しているのですから、しっかりこの現実を受け止め、一日も早い対応をすべきだと思います」

子どもたちは成長過程のなかで彼らなりにもがき苦しんでいるのです。その叫びを封じ込めるのではなく、大人たちがしっかり受け止め、向き合い、導いてやることが学級崩壊の解決の第一歩なのかもしれません。
(構成・文/横田裕美子)

お話を伺った人

増田修治
増田修治
白梅学園大学 子ども学部子ども学科教授
埼玉大学教育学部を卒業後、28年間の小学校教員 生活を経て、現職。専攻は、臨床教育学、学級経営論。 小学校教諭を対象とした研修の講師なども務め、さまざ まな学校問題に取り組んでいる。また、新聞、テレビ、雑 誌などメディアのコメントなども多数。「笑う子育て実例集」 (カンゼン)ほか、著書も多数。
埼玉大学教育学部を卒業後、28年間の小学校教員 生活を経て、現職。専攻は、臨床教育学、学級経営論。 小学校教諭を対象とした研修の講師なども務め、さまざ まな学校問題に取り組んでいる。また、新聞、テレビ、雑 誌などメディアのコメントなども多数。「笑う子育て実例集」 (カンゼン)ほか、著書も多数。