メディア個別 LIFE SHIFTの書評を作家の堀田純司さんが送る読書コラム | michill (ミチル) | ママの知りたいが集まるアンテナ「ママテナ」
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LIFE SHIFTの書評を作家の堀田純司さんが送る読書コラム

第211回 michill (ミチル)
いま、夫が働けなくなったらどうしますか?家庭を支える程のキャリア構築はしていますか?寿命100年の新時代、夫が外で働き、妻は家庭を守るという20世紀のライフスタイルでは危ないかもしれません。今後の女性ライフスタイルについて、リンダ・グラットンさんの『LIFE SHIFT』を通して、ご紹介していきます。

この記事の本の値段

LIFE SHIFT(ライフ・シフト) リンダ グラットン アンドリュー スコット(東洋経済新報社)1,944円(税込)

※東洋経済オンラインストアより(定価)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)



中年詐欺師たちの小説を書いたり、エンタメ分野のノンフィクションを書いたりしている作家の堀田純司と申します。

このコーナーではみなさまが読んで、オンにもオフにも役立つ本を紹介したいと思います。

この本は…?

【キャリア構築に前向きで意欲的な人の指針に、ぜひオススメです。】

この本は、『ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉』で新時代の働き方を説き、全世界的なヒットとなったリンダ グラットンさんの新著です。昨年10月の発売以来、大きな注目を集めています。

前作「ワーク・シフト」は、今後10年を視野に入れ、未来の働き方を考えるものでした。本作が提起するのもまた未来。「寿命100年の時代」の生き方。そのヴィジョンは、今までの「老後の人生設計」といったイメージとは違います。

今までのような「教育」「仕事」「引退」という3つのステージで、人生を設計するモデルはもはや過去のもの。

たとえば、私たちの親の世代は、「学校を出て、就職し、そしてやがて引退して老後を過ごす」という人生のモデルがありました。ですが、寿命100年の時代には通用しない、と著者たちは説きます。

100年生きる時代で、どう人生設計していくべきか

では、長い人生を幸福に暮らしていくために、必要とされるのはなにか。それは、キャリアをひとつだけではなく、ふたつ、あるいはみっつかそれ以上、構築していく「マルチステージ」の人生設計。起伏に富んだ長い人生を過ごすことをはっきりと意識し、今を生きるヴィジョンです。

かつては「ひとつ」の安定を手に入れることさえできたら、暮らしていくことができました。しかし現代では、そうした安定は過去のものとなり、次々と変化する状況に、柔軟に、多様なスタイルで対応していく必要がある。この点で、著者の思想は前作から一貫しています。

たとえば、20世紀であれば「夫が外で働き、妻は家庭を守る」というライフスタイルもあった。しかしそれは「教育」「仕事」「引退」の3ステージモデルが成立していた時代の話で、実働期間が長くなった現代では、リスクもある。ぶっちゃけ、長い人生、なにがあるかわからないわけです。夫が働けなくなったらアウト、というモデルでは危ない。

であるなら、むしろパートナー関係を通して、リスクの分散を考える。平たくいうと、夫も妻もそれぞれキャリアを構築し、ある局面ではどちらかが家計を支え、違う局面では、また違う役割を担う。そうして、長いマルチステージの人生に訪れるいろいろな状況に対応していく。

そうした「夫婦が増えるだろう」と本書では予測されていますが、実際に「同類婚」が増えているのだそうです。かつてのモデルの場合、夫と専業主婦の妻では、持っているスキルがかなり違った。しかし現代では、スキルや所得が近い人同士の結婚が増えていると本書でも指摘されています。

しかし現代では選択肢も増えた。一生シングルという生き方もアリではないか。もちろん著者も、そうした生き方を否定しません。しかし(私自身が高齢非婚者なのでちょっと複雑な気分ですが)、現代では法律上の婚姻関係が持つ長期的な性格、権利の法的保護の強さなどを考えると、長い人生を生きる上で、パートナーシップはむしろ大切になると、著者たちは語ります。ちなみに、ばんばん離婚しているイメージがあるアメリカですが、離婚率はなんと減少に転じているそうです。

大切なのは未来を見越して、「主体的に選択すること」。結婚という選択は、パートナーと長い時間、深く関わり続けることを決断するわけです。

長い人生にはいろいろなことがある。どんな局面でも、大丈夫か。夫婦で役割を交替しながら人生に対応していくためには、徹底的に話し合って、方針を共有しておいたほうがいい。今までとは違う見方が必要だと、著者は説きます。

資産形成の変化

もちろん「寿命100年時代」に訪れる変化は、結婚生活だけではありません。もちろん資産の形成も変わる。金融資産だけではなく、友人関係のネットワークなどプライスレスな資産も価値も、変化に富んだ人生を生きる上でより大切となります。

実際、これは友人の社会学者から聴いた日本の例ですが、子どもを育てる上で、地域にちゃんとネットワークを持っている人ほど有利、という研究もあるそうです。仕事も同じでしょう。広く多様な人脈を持ち、いろんな状況で頼れる友だちがいる人のほうが強くなる。

将来の資産計画も変わります。老後に必要なお金は今でも少ないはず。でもその楽観は危ない。医療費や、介護を受けるためのコストを考える必要があります。そこは著者も現実的に指摘します。

また社会的に言えば、正直、教育や収入などの格差は、大きくなっていくことでしょう。スキルと知識が不足している人は、「長寿化の恩恵に浴することができず、むしろ損失をこうむるリスクが切実」。

こうした時代、本来ならば、男性より現実への対応能力が高いと言われる女性のほうが、より能力を発揮できる世界になるのかもしれません。しかし実際には、環境や賃金の格差は、先進国でもまだまだ残っている。こうした格差の解消は、むしろ頭打ちになってしまった印象さえあります。

だから、「一人ひとりがはっきりと意思表示をし、自分の希望とニーズを明らかにすることにより、企業の変化を後押しすることが必要になる」。そうして個人や集団で新しい生き方の実験が行われるようになる。こうした変化は好ましいことだと、著者は語ります。

正直にいうと、人生でふたつもみっつもキャリアを構築するどころか、「ひとつだって難しいよ!」と嘆きたくもなります。できれば、ひとつの安定を手に入れて、それでぼんやり暮らしたい。ただ、確かに人生は長いです。変化に対応できる柔軟さを持たなければならないことは真実でしょう。本書を読んで、そんな風に身が引き締まる思いがしました。



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”笑顔が満ちる、ちょっとしあわせなワタシ” michill(ミチル)は、毎日がんばる女性が「もっと日常を便利にしたい」を見つけるために、 役に立つコツやここでしか見られない情報を提案するライフスタイルメディアです。 ファッション、ヘアスタイル、レシピなど専門性の高いライターによる信頼できる情報を中心に配信しています。
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