専業主婦ってダメですか?働きたくても働けないときはどうする?

第3回 みんなが共感!ママのお悩み
かつて専業主婦が一般的だった日本でも、女性の社会進出が加速の一途をたどっています。金銭面は共働き世帯が有利ですが、専業主婦ならではのメリットも満載です。計画を立てれば、社会復帰や将来のための資産形成も決して難しくありません。

専業主婦はどれくらいいるの?

働く女性が増え続けていますが、専業主婦を選択する人もまだまだたくさんいます。女性の社会進出に理解が深まる一方で、夫の仕事によっては働きに出ることが難しいなど、重大な課題も山積みです。

専業主婦の割合

「独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)」による長期労働統計によると、2019年の共働き世帯は「1245万世帯」に対して専業主婦世帯は「575万世帯」です。共働き世帯が、専業主婦世帯を大きく上回っています。

以前の日本は、結婚後の女性は専業主婦が大半を占めていました。ところが、年功序列や終身雇用といった社会の仕組みに限界が訪れて、男性1人で家計を担うのが難しくなったことから、働く主婦が増え続けています。

「男性が働きに出て女性が家庭を守る」から「子どもができた女性も仕事を続けた方がよい」と考え方が変わってきていることも、大きく関係しているでしょう。

https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0212.html

日本にはまだ専業主婦社会が残る

兼業主婦が増え続けている一方、専業主婦にならざるを得ないケースも少なくありません。欧米では、早くから女性の社会進出を見据えて支援制度の整備を進めてきました。

日本は、長時間勤務や転勤に対応できる人を優遇する企業が今もたくさん残っています。毎日のように夫の帰りが遅い場合、夫婦で家事と育児を分担するのは困難です。夫の転勤に合わせて転職を繰り返すのも、現実的とはいえません。

「子どものためにも家にいるべき」という考え方も根強く残っており、働きに出ることに反対されるケースもあるでしょう。

専業主婦に向いている女性って?

働くことが性に合っている女性がいるのと同じように、専業主婦に向いている女性もいます。ずっと家にいると会話の量が減ってしまいますが、1人の時間が楽しめる性格なら苦になりません。

ママ友との付き合いも増えることから、コミュニケーション能力がある人も専業主婦に向いているといえるでしょう。仕事はやることが決まっているのに対し、家事は自分で管理する必要があります。「段取りよく家事を進められるかどうか」も、重要です。

専業主婦のメリット

専業主婦は子どもとじっくり向き合えるだけでなく、家事に専念することで夫婦の関係が円満になるケースもあります。夫のみの収入のため、自然に節約への意識が高まる傾向です。

共働きだとできなかった自炊やアイロンがけなどをすれば、節約が叶います。お財布にも心にも余裕が生まれ、充実した日々を送っている主婦もいるでしょう。

子どもと一緒に過ごせる時間が長い

子どもは成長とともに、親と過ごす時間が減っていくのが一般的です。子どもが18歳になるころには、親子で過ごす時間の大半が終わってしまうともいわれています。

子育てに奮闘している間は、途方もなく長く感じるかもしれません。ただ「過ぎてしまえばあっという間だからこそ今のかけがえのない時間を大切にしたい」と考える人も多いでしょう。

専業主婦は子どもと過ごす時間が長いぶん、初めてできたことや成長を間近で見られるのも大きなメリットです。

夫を支えることに集中できる

共働きの場合、家事に協力してくれない夫に「わたしも外で働いているのに」と不満を抱いてしまうこともあるでしょう。一方で、専業主婦にとって家事は立派な仕事です。

「自分の役目」ととらえているため、夫が家で寝てばかりいても「ゆっくりくつろがせてあげたい」とやさしく受け入れられます。

隅から隅まで部屋をきれいにしたり夕食を一生懸命つくったりするなど、家事をとおして夫をサポートすることに充実感を覚える人も少なくありません。日ごろから夫をいたわることで、愛情や尊敬する気持ちが深まることもあります。

節約上手になる

専業主婦世帯は、夫婦ともに「2人のお金」という意識が強い傾向です。ほしいものがあったときも衝動買いはグッとこらえます。相手に相談したうえで吟味するため、無駄遣いを未然に防げるでしょう。

夫の収入のみで上手にやりくりするためにも、家計簿をつけるなどしてお金を管理する習慣も身につきます。時間の融通も利くことから、チラシやインターネットで特売日をチェックして通常より安く購入できるのも、専業主婦ならではのメリットです。

毎日をもっと充実させるためのポイント

家事や育児だけで1日が終わると、毎日同じことの繰り返しになってしまいます。ちょっとした空き時間を有効に活用すれば、単調だった生活に彩りが加わって自分らしい生き方も発見できるでしょう。

美容と健康に時間を使う

適度に体を動かすことは美容と健康につながり、ストレスの発散にもなります。ヨガやピラティスは心を落ち着かせてくれることから、気分転換にもなるでしょう。

本格的なレッスンから地域主催のリーズナブルな教室まで、選択肢も豊富です。「YouTube」などでプロのインストラクターが投稿している動画を見ながら、気軽に始められます。

天気のよい日はウォーキングもおすすめです。ルートを変えたり景色の写真を撮ったりして、楽しく続けられるでしょう。

自分の特技を見つける

趣味も突き詰めれば、特技になります。生活にハリが生まれるだけでなく、仕事につながることも珍しくありません。

たとえば、ハンドメイドやラテアートなど技術や表現力が養われる趣味は、最初こそ上手にできなくても理想に1歩近づいたときの喜びはひとしおです。

慣れてきたら、ハンドメイド作品をサイトやフリーマーケットで販売したり、家族やママ友にラテアートを披露したりするのもおすすめです。活動の場を広げれば、やりがいも生まれるでしょう。

専業主婦が抱える将来への不安

専業主婦世帯では収入源が夫のみです。今は不満や問題がなくても、子どもの教育費が膨らんできたときや、夫の失業や離婚などの思わぬトラブルに直面する可能性もゼロではありません。

子どもの教育費をどう工面するか

子どもがいる家庭の場合、教育費が気がかりです。幼稚園のころからも、お金はかかります。

「文部科学省」による2018年度の「子どもの学習費調査の結果について」によると、学習に必要な1年間のお金は公立の幼稚園が約22万円、私立は約52万円になります。3年間通わせると、私立では150万円以上にのぼるでしょう。

小学校は公立の6年間で約192万円、私立では約479万円です。幼稚園から大学まで合わせると、1人あたり約1000~1700万円かかる計算になります。

教育費を工面できたとしても、貯金がほとんどない状態で定年を迎えるケースも珍しくありません。共働きに比べてもらえる年金が少なく、老後が不安になるのも自然なことです。

https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxt_chousa01-000003123_01.pdf

夫の失業や離婚で生活が困難になりやすい

仕事が順調で夫婦関係も良好でも、いつ何が起こるか予測できません。会社が突然業績不振に陥るなどして、失業する可能性は誰にでもあります。思いもよらない問題が浮上し、離婚を考えることもあるでしょう。

専業主婦は収入がないため、いずれの場合も生活そのものが危ぶまれます。離婚が成立すれば、新しい住まいを探さなくてはなりません。

無収入では、部屋を借りるのは困難です。子どもの親権を争うことになった場合、経済力がないことがネックになる可能性もゼロではありません。

働く前に考えておきたいこと

外に働きに出る前に、1日の流れやお金の動きをシミュレーションすることをおすすめします。保育園や習いごとの送迎をこなし、限られた時間で家事を済ませるのは大変なことです。

保育に必要な費用とも照らし合わせて「今働く必要があるかどうか」を考えてみましょう。

保育園や習いごとの送り迎えが大変

保育園の送迎は「毎日が戦い」といっても過言ではありません。保育園の場所が自宅から遠かったり職場とは逆の方向だったりすると、早め早めに行動することが求められます。朝からドッと疲れることも、しばしばです。

お迎えの時間も決まっているため、特にフルタイム勤務の場合は仕事が終わると急いで向かわなくては間に合いません。保育園も習いごとの送迎も、子どもの機嫌が悪くなって時間をロスすることも多く、ストレスを感じる人もいます。

習いごとによってはおやつや夕食の時間と重なることから、軽食の用意が必要になるのも悩みの種です。

子どもが病気になったときに休むのは妻?

0歳児の「年間病欠日数」は、20日とされています。特に、子どもが小さいうちは想像以上に体調をくずすため、病気になったときの対応を考えておく必要があるでしょう。

共働き世帯では「子どもが病気になったときは妻が休む」という家庭が大半ですが、「病児保育」や「病後児保育」をうまく活用して乗り越えている人もいます。

夫婦ともに帰宅時間が遅い場合は、保育園や習いごとの送迎をベビーシッターやファミリーサポートに依頼するのも手です。自分1人で何とかしようと気負わず、外部の力を借りることも視野に入れてはいかがでしょうか?

保育料や洋服代など働くのにもお金がかかる

「家計のために」と思って働き始めても、保育料や仕事に必要な被服費などがかさんでかえって損をケースもあります。認可保育園の保育料は世帯収入に応じて変動し、世帯収入が高いほど保育料も高額です。

残業が多い職場なら、19時前後までの「延長保育」では対応できず、ベビーシッターなどの「二次保育」が必要になることも考えられます。こうなると費用もかさむでしょう。

外に働きに出るとなれば、洋服・化粧品・美容院など身なりを整えるための費用だけでなく昼食代も欠かせません。必要経費が多いことから、子どもがある程度大きくなってから働きに出る人もいます。

妻の家事負担が大きい

家事を分担している共働き世帯でも、多くの家事を妻が担当しているケースが大半です。夫が担当するのはゴミ出しや風呂掃除といった簡単なものが中心で、料理や洗濯など手間のかかる家事は全部妻という偏りも不満の原因となっています。

子どもが手のかかるうちはスピーディーに家事を終わらせたいところですが、子どもの機嫌が悪くなったり夫がほかの用事を頼んできたりするなど、邪魔が入るのも日常茶飯事です。

家事に追われるあまり、少しの間湯船につかるといった小休憩さえ難しい日もあるでしょう。

再就職を考えるのは育児が落ち着いたらでよい?

「今は専業主婦でも近い将来に再就職したい」と考えている人も多いでしょう。理想の働き方を具体的にイメージしたうえで、自分に合った雇用形態を判断します。必要に応じて、社会保険の加入も検討しましょう。

ブランクが長いと仕事を探しにくい

特に正社員での再就職は、ブランクが長いほど難しくなります。履歴書を書くときも空白期間が目立つことから、採用してもらえるか不安を覚える人もいるでしょう。

正社員としての再就職にこだわるなら、覚悟や努力も必要です。正社員として社会復帰できたとしても、家事や育児とうまく両立できないからといってすぐに辞めてしまってはキャリアに傷がついてしまいます。

「責任感のある仕事や長時間勤務は難しい」と感じたら、融通の利きやすい派遣社員やパートなどほかの働き方も検討してみましょう。

パートは譲れない条件を決めて探す

パートは正社員よりも勤務先や勤務時間にこだわれます。育児や家事が忙しい場合は、無理なく通える職場が便利でしょう。

勤務時間も重要で「幼稚園に通っている間に働く」「保育園に預けてフルタイムで働く」など、働ける時間を想定して明確にする必要があります。幼稚園の場合も園の「預かりサービス」や民間の「学童保育」を利用すれば、長時間勤務も可能です。

再就職のための足がかかりとして、パートを始める手もあります。短期間の仕事でもブランクが埋まれば、採用される可能性が高まるでしょう。

社会保険や厚生年金も意識

社会保険の適用範囲が広がったことで、一定の条件を満たしていればフルタイムでなくても「厚生年金」に加入できます。しかし、従業員の数によって週所定労働時間の条件が異なるため、注意が必要です。

従業員数が501人以上の会社は週所定労働時間が「20時間以上」であるのに対し、従業員数が500人以下の会社では「30時間以上」と大きく異なります。

厚生年金に加入すれば将来の年金が増えますが、年収によっては社会保険料が差し引かれて直近の手取りが減るケースがあることも頭に入れておきましょう。

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000568742.pdf

受け取れるお金の違いを知ろう

専業主婦は夫の「扶養」に入ることで、国民年金保険料を支払う必要がなくなるなどのメリットがあります。一方、共働き世帯よりも年金の受給額が少なく、出産手当金が受け取れないといったデメリットに不安を覚える人もいるでしょう。

専業主婦も年金を受け取れる

「扶養に入っている」とは、税金や社会保険の納付が難しい人が税金を納めている家族の収入で暮らしているということです。働いていない子どもや、収入の少ない配偶者などが該当するでしょう。

20~59歳の専業主婦が厚生年金に加入している夫の扶養に入っている場合、国民年金制度において「第3号保険者」にあたります。

扶養に入っている期間は「国民年金保険料」を納めたのと同じ扱いになりますが、扶養に入った後も夫の厚生年金保険料はそのままです。国民年金保険料を払うことなく年金を受給できるのは、専業主婦ならではのメリットといえるでしょう。

20歳で結婚して60歳まで扶養に入り続けた際は、65歳から毎年約80万円の「老齢基礎年金」を受給可能です。夫が亡くなった際の保障も手厚く、夫が受け取るはずだった厚生年金の4分の3が「遺族厚生年金」として妻に支給されます。

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html

老齢厚生年金や出産手当金は受け取れない

厚生年金に加入している兼業主婦は、老齢基礎年金に加えて「老齢厚生年金」も受け取れます。

一方で、専業主婦は厚生年金に加入している夫の扶養に入っていても、自分自身が厚生年金に加入しているわけではありません。受け取れるのは「老齢基礎年金のみ」です。

厚生年金に加入していない専業主婦は「出産手当金」も受け取れません。出産手当金は「被保険者本人が出産で会社を休んでいる期間」が対象のため、夫の扶養に入っていたとしても対象外となります。

将来に備えてお金の知識を身につけよう

子どもの教育費はもちろん老後の生活にも何かとお金がかかります。額が大きいからこそ、少しでも早く備えておくと安心です。専業主婦でも気軽に始められる「資産形成」の手段も押さえておきましょう。

どのように資産形成をしていくか考える

住宅資金・教育資金・老後資金は「人生の3大資金」ともいわれています。計画を立てやすいのは教育資金ですが、合計で1000万以上かかると思うと途方もない金額に不安を覚える人もいるでしょう。

合計の金額ではなく「月々の支出」で見れば、ハードルがグンと下がるはずです。公立・私立それぞれの年間教育費から月々の費用を割り出せば、だいたいの額がわかるでしょう。中学・高校・大学に向けての資金形成もイメージしやすくなります。

私立に進学させたい場合も同様に、早めに積み立てることがポイントです。少額でも行動に移すことで着実に目標に近づき、不安も払しょくされます。

iDeCoのメリットを知る

国民年金保険などの公的年金のほかに、私的年金といわれる「確定拠出年金」があります。企業や個人が一定額の掛け金を支払い、長期的に運用して積み立てるものです。

主に、毎月企業が従業員のために積み立てる「企業型」と、個人で積み立てる「iDeCo(イデコ)」の2種類があります。2017年以降、専業主婦も利用可能です。

所得税や住民税を支払っていない専業主婦の場合は拠出時の節税効果を得られませんが、運用時や給付時における税制優遇措置を受けられます。

iDeCoは、一時金として受け取れば「退職所得」の扱いになり「退職所得控除」の適用対象です。年金として受け取れば「雑所得」として「公的年金等控除」を受けられます。

専業主婦は退職金がなく公的年金の額が少額とあり、課税されずに受け取れる可能性も高いでしょう。

まとめ

専業主婦は子どもとじっくり向き合う時間を確保でき、夫の扶養に入ることで年金を受け取れるなどのメリットもあります。しかし一方で、社会復帰や将来への不安を抱いている人がたくさんいるのも事実です。

働きに出たくなったときは、ライフスタイルに適した勤務時間や雇用形態などを基準とします。社会保険も意識することが大切です。お金に関する知識を身につければ自信も生まれ、未来の幸せにも大きく近づくでしょう。