ダウン症の息子が世界へ!【金子エミ】が語る息子と水泳との出会い

第2回 パーツモデル・金子エミにインタビュー
パーツモデルの金子エミさんが、ノンフィクション・コミックエッセイ『美容家ママとダウン症カイトの世界水泳奮闘記! 世界は君のもの』(オレンジページ、まんが・小林裕美子)を出版。‘12年から4年に渡って挑戦し続けてきた「世界ダウン症水泳選手権大会」に、昨年、息子のカイトくん(19)が日本代表として出場。モデルも育児も常に全力投球の金子さんが、“カイトくんと水泳の出会い”について教えてくれた。

●プールから上がったカイトの顔は輝いていました

「私は、母親として自信があるわけでもないし、教育に詳しいわけでもないので、子育てで一番基本にしているのは、とにかく“子どもたちのイキイキしている顔を大切にする”こと。そこだけしか見ていないと言えるくらい大切にしています。そもそもカイトは、お風呂に入ったらなかなか出てこない人で、“いったい何時間入ってるの?(笑)”というくらい水が好きでした。水泳は、元々弟のリオ(12)がベビースイミングを習っていたので、カイトにも思い切ってトライさせてみたんですね。泳ぐ前は不安そうだったので、“これは無理かな~”と思ったんですけど、プールから上がってきた時のカイトの顔が、すっごくいい顔だったんですよ!」(金子氏 以下同)

ダウン症児の子育て

この出会いが、カイトくんを大きく変えた。

「カイトには自閉傾向がありますが、彼は水泳と出会ったことで本当に変わったと思います。元々私自身がポジティブなので、”同じデザインの靴じゃないと出かけない”といった彼のこだわりも『おしゃれさんなのね』ととらえていて、自閉傾向に全く気づかず、普通に保育園に通わせていたんですね。そういう環境で育ったカイトは、同じ症状を抱えた子どもたちと比べると、少しだけ伸び伸びしているのかもしれない。でも実は、彼の性格は私とはまったく似ていなくて、元の夫にそっくりなので、どちらかというとネガティブなんですよ。でも水泳と出会ったことで、どんどんポジティブな部分が成長してきたような気がします」

水泳は、カイトくんに「努力すれば必ず実る」という大きな教えを与えてくれた。

「スポーツは、いい時もあれば悪い時もあります。特に水泳は、タイムではっきりと結果が出ますよね。だからカイトにとっては、何事もいい時と悪い時があって、頑張ればこうなる、努力すれば実るとか、そういうことはわかりやすかったのかなと思います。例え結果が出なくても、“それでもやる!”という力は、まぎれもなく、水泳で培われた賜物ですね。世界大会を経験して以降のカイトはさらに変わって、水泳に対して貪欲になったし、たくましくなりました。カイトは元々、負けん気が強い部分があるので、そういう意味でもアスリートには向いていると思います」

●親が子どもから教えてもらう機会があってもいい

カイトくんが水泳と出会ったことで、家族や金子さん自身の人生そのものが変わったという。

「カイトとリオは、カイトのほうが知的に幼い分、一緒に遊ぶことがほとんどできないんですけど、水泳なら一緒に楽しめるんですね。我が家では、息子たちだけではなく、パパも私もはまって、毎週プールに出かけるようになりました。みんなで鏡の前でフォームをチェックしたり、4人で食事する時も、とにかく水泳の話ばかりしています(笑)。本来、親が子どもに教えることの方が多くて、親は威張ってしまいがちだけど、私たちの場合、水泳に関しては子どもたちから教えてもらうことの方が多いんですよね。リオがパパの背泳ぎを褒めるのを見ると、“あ~これはなかなか素敵な光景だな~”と思います」

最後に美容家として、金子さんからアドバイス!

「スポーツをしている高齢の方の足を見ると、やっぱり、水泳をやっている人の足が一番キレイなんですね。水圧を受けるし、水のなかでは必ず足が動くので、マッサージ効果もあると思います。むくみも改善されるので、ママも一緒にやるべきだと思いますよ」

水泳と出会ったことで自信と誇りが育まれ、大きくたくましく成長したカイトくん。やがて水泳は、家族にとって素晴らしいコミュニケーションの場に…。インタビュー中に見た金子さんの輝かしい笑顔は、家族からもらった“幸せの数々”を物語っていた。

(写真/石野明子 取材・文/蓮池由美子)

お話をうかがった人

金子エミ
金子エミ
パーツモデル・美容家
雑誌や書籍を通して、自身の美容法を発信。’97年に、長男・カイトくんを出産、ダウン症と判明する。’16年、「ダウン症世界水泳選手権大会」の日本代表選手にカイト君が選ばれる。
雑誌や書籍を通して、自身の美容法を発信。’97年に、長男・カイトくんを出産、ダウン症と判明する。’16年、「ダウン症世界水泳選手権大会」の日本代表選手にカイト君が選ばれる。