「上の子かわいくない症候群」の特徴とは?

第2回 「上の子かわいくない症候群」って知ってる?
「今まではあんなにかわいかったはずなのに、下の子が生まれてから、なぜか上の子がかわいくないと感じてしまう」「下の子が生まれてから、上の子のすることにイライラするようになってしまった」「上の子にばかりキツくあたってしまう」など…同じ自分の子なのに、なぜか「上の子がかわいくない」と感じてしまうママがいる。

これは「上の子かわいくない症候群」とも呼ばれる現象で、意外とよくあることらしい。こうした現象が起こる理由について、「きょうだい型人間学」の第一人者で、国際基督教大学社会心理学教授、心理学・言語学デパートメント長の磯崎三喜年先生は言う。

「ひとりっ子の場合は、ほかに比べる必要がなく、そのまま『かわいい』という感情を持ち続けます。しかし、第一子の出産からある程度経って第二子が生まれると、上の子には赤ちゃん特有の『かわいい』『保護したい』と感じさせる特徴はなくなっています。だから、無条件に保護したい対象とは違った存在になってくるのです」(磯崎先生 以下同)

女の子と赤ん坊

●下の子ができたことで、上の子への期待が変わる?

また、最初の子には、期待と希望の気持ちで接することが多いもの。だが、二人目が生まれたときには、その「期待」が、上の子に対して「手を煩わせないでほしい」「静かにしていてほしい」「手伝ってほしい」などの思いに変わる場合があるそう。

「そのため、下の子に関わっているときに、上の子がグズるなどすると、親としては自分の期待に応えない、期待からズレているように感じることがあります。『今はそれどころじゃないのに』と腹が立ったり、第二子との関わりの妨げになると感じてしまったりするのではないでしょうか」

下の子ができたことで、「赤ちゃん」として保護したい存在じゃなくなった上の子には、「自分の気持ちを察してほしい」「期待に応えてほしい」という思いを無意識に抱いてしまうことがある。

だが、上の子は当然まだ幼いだけに、母親に甘えたいし、かまってもらいたい。そこでますます泣いたり、注意をひこうとしたりする行為にイライラ→「上の子はかわいくない」と感じてしまうことがあるようだ。

「ただし、これは母親に多い現象だと思います。父親や祖父母は、母親に比べて子どもとのかかわり方の度合いが低く、育児の負担感が少ないので、上の子と下の子の区別があまりないのでは?」

また、逆に祖父母の場合は「初孫」はやはり特別な存在で、何歳になっても無条件の「かわいい」を維持しやすいことがあるそう。

直接関わる時間が多く、育児の負担も大きい母親が、生まれたばかりの赤ちゃんに比べて上の子にイライラしたり、キツくあたったりしてしまうのはある程度仕方のないこと。

あまり心配する必要はないようだが、気になるときは、周囲の家族の力を借りてみるのもひとつの手かも。
(田幸和歌子+ノオト)

お話をお聞きした人

磯崎三喜年
国際基督教大学教養学部社会心理学教授 心理学・言語学デパートメント長
きょうだい構成による性格の違いなどを研究する「きょうだい型人間学」の第一人者。茨城大学、広島大学大学院を卒業後、広島大学助手、愛知教育大学助教授を経て現職に。
きょうだい構成による性格の違いなどを研究する「きょうだい型人間学」の第一人者。茨城大学、広島大学大学院を卒業後、広島大学助手、愛知教育大学助教授を経て現職に。