実はとてもキケン!人をうつぶせに抑え込まないで

第1056回 今日のこれ注目!ママテナピックアップ
先日、東京都内の電車内で、乗客同士のトラブルから乗客の一人が亡くなってしまうという事件が発生。その死因は窒息死。トラブルからホームに降りた乗客の上に、3人の乗客がのっかって押さえているうちに呼吸ができなくなってしまったと考えられている…。

うつぶせといえば、赤ちゃんの場合は危険な眠り方として有名。多くのママパパも、わが子がうつぶせに寝ていたら、急いでコロンと裏っかえしたことがあるのではないでしょうか。保育施設では、睡眠中の死亡事故が相次いでいて、平成25年度は16名の児童が睡眠中に死亡。そのうち、うつぶせ寝によるものは9名と、うつぶせ寝による睡眠中の事故発生率は高いのです。

しかし、これは子どもの話。大人にとってもうつぶせって危険なのでしょうか?

実はとてもキケン!人をうつぶせに抑え込まないで

●うつぶせになることでカラダに起こる変化

うつぶせによってカラダにどんな変化が起きるのか? 調べてみると、うつぶせ(腹臥位)になると、まず腹部の圧迫によって大動脈や下大動脈が圧迫され、静脈内の血流量が減少し、血圧が低下するそう。また、呼吸においては横隔膜が頭部側に移動し、腹部の圧迫とあいまって、肺が拡がりにくくなってしまうとのこと。

兵庫県市立加西病院のウェブサイト上には、寝たきり患者を作らないための腹臥位療法に関するコラムがあり、そこには腹臥位の注意点として以下のような記載があります。

“一番心配なのは、”骨折”と”窒息”です。 長い間寝たきりになっていた人は、骨がもろくなって折れやすくなっています。腹臥位になるときに無理な力をかけないようにしてください。また、頭を自分でもちあげられない人は、窒息の危険があります。腹臥位中は、そばにいて見守ってください。 腹臥位療法を始めるときは、事前に主治医の先生や、訪問の看護師さん等に相談してください。”(引用)

寝たきりの患者さんにとっては、ある一定の効果を期待できるようですが、自力で頭を持ち上げることができない人にとっては、窒息の危険があり無理な力をかけるのは危険ということ。通常、私たちは無意識のなかで呼吸をしていますが、肺のなかの呼気をすべて吐き出しているわけではなく、予備呼気量や残気量というものがあり、これらを合わせて機能的残気量と呼びます。

この機能的残気量、カラダの中でガス交換(取り込んだ酸素と血中の二酸化炭素の交換)に大きく関わるといわれている。しかし、体位によってこの機能的残気量には変化があり、立位や座位に比べ、臥位では15~20%程度減少するといわれているのだといいます。つまり、体位的に見ても、臥位は窒息しやすいということ。

子どもはもちろん、大人でも安易に人の臥位の上に乗っかる行為は、やはり危険。トラブルになったからと、マウンティングポジションでいさめるのではなく、私たちにはもっと別の解決策があるはず。命の尊さを考えることができるのが、私たち人間なのですから…。
(文・団子坂ゆみ/考務店)

※参考 宇都宮明美『体位と呼吸監理』