夫のメンタル不調を予防するために夫婦でできることは?

第4回 パパが産後うつに? 「イクメンブルー」とは
「イクメン」が父親の姿として当たり前になりつつあるなかで、仕事とのバランスがうまく取れずにしんどい思いを抱えている男性もいる。夫婦間でできることはあるのだろうか。父親の産後うつの研究をしている国立成育医療研究センターの竹原健二さんに聞いた。

●夫婦はチームだと心得ることが夫のメンタル不調予防にも

寝不足に悩まされるなか、家事や育児に奮闘するママ。とくに産後はホルモンバランスの変化などもあり、夫に対して優しい気持ちになれない人もいることだろう。家事や仕事の負担など、自分の大変さを主張するのは一時的なストレス発散にはなるかもしれないが、夫婦関係が悪化するおそれもある。

「仕事に加えて、家事や育児への負担が重なった結果、パパがダウンしてしまうこともあります。もしパパが倒れてしまったら、ママはパパからのサポートが受けにくくなるだけでなく、子育てと同時にパパのケアもしなくてはいけなくなってしまう。2倍の負荷が生じることに加えて、休職や退職による経済的な不安も抱えるリスクがあります」

夫婦をチームと心得て、子育て期をいかに乗り越えるか。そこに重点を置いて考えれば、互いに気づかう優しさも生まれるかもしれない。

●家事のあら探しよりも「ありがとう」

父親は家事をする時、クオリティの高さは目指していないと竹原さんはいう。

「役割分担されている場合を除き、パパは家事を手伝おうとする際、『ママに少しでもゆっくりしてもらいたい』ことが目的です。なので、ママが求めるような家事のやり方、出来ではないことも多い。多少の粗があったとしても、まずは『パパのおかげでゆっくりできたよ。ありがとう』と声をかけると、パパのモチベーションが上がって、次第に家事の精度も上がるかもしれません」(竹原さん 以下同)

洗ったはずの食器に多少の汚れが付着していたり、洗濯物がシワだらけの状態で干されていたり。妻からすると、夫に家事を任せても二度手間になるだけと思う人もいるかもしれない。

しかし、家事のあら探しに目くじらを立てるよりも「ありがとう」と伝えた方が、夫婦の関係性もよくなるだろう。食器の洗い方を教えるのは、その後でもいい。

小さい子供がいる家族

●夫がメンタル不調になったら…「イクメンは義務ではない」

2016年6月に始動した厚生労働省による「イクメンプロジェクト」。「イクメンとは、子育てを楽しみ、自分自身も成長する男のこと」をコンセプトに、男性の育児参加や育児休業取得を推進している。

共働き夫婦が増えているなか、家事や育児に意欲的な男性が増えるのは、女性にとってはありがたいこと。反面、すべての父親に家事や育児参加を強制しているような息苦しさも感じる。

「政府がダイバーシティを推進する一方で、男性を“イクメン”の型にはめようとしているのは矛盾していますよね。夫婦によって関係性はさまざまです。例えば、夫が仕事を通して夢を実現させるために、妻が家事・育児を担当して夫をサポートするケースもあるでしょう。すでに関係性が成立している夫婦にひとつの価値観を押しつける必要はありません」

夫婦で育児にどう取り組むかは、お互いの問題。それぞれの負担をどうケアしていくかは、世間の意見に惑わされず、自分たちの関係を軸に考えていく方が賢明なのかもしれない。
(畑菜穂子+ノオト)

(参照)「イクメンプロジェクト」 https://ikumen-project.mhlw.go.jp/

お話をお聞きした人

竹原健二
竹原健二
国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部 政策開発研究室長。筑波大学大学院卒。妊産婦ケアや父親のメンタルヘルスなどを中心に研究を進める。3児の父親でもある。
国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部 政策開発研究室長。筑波大学大学院卒。妊産婦ケアや父親のメンタルヘルスなどを中心に研究を進める。3児の父親でもある。