従来通りでいい?先行き不透明な時代にお金をかけた教育をする意味は

第3回 経済格差広がる社会でこれからの「子どもの教育」
少子高齢化や人口減少、2008年のリーマンショック以降の年収減少、リストラなど、いまの日本は将来が不透明になっているといわれています。そんな時代のなかで子育てをしていると、「いままで通りの教育でいいのだろうか?」と疑問に思ったことがある人もいるはず。そこで『子ども格差の経済学「塾、習い事」に行ける子・行けない子』(東洋経済新報社)の著書であり、京都大学名誉教授の橘木俊詔(たちばなきとしあき)さんに話をうかがいました。

学校以外の教育(習い事)は親が頑張るしかない?

子どもの教育は学校が主となっていると思いますが、それ以外にも塾やそろばん、スポーツ、音楽など、さまざまな種類の習い事があります。「子どもが小さなころから英会話をはじめたほうがいい」などの話を聞くことはよくありますが、これら学校以外の習い事は実際にはどうなのでしょう?

「スポーツをすれば健康にいいですし、ピアノを弾けば心が豊かに育つので習い事を否定するつもりはなく、いいことだと思います。ただし、家庭の経済状況に余裕のある人は習い事をさせて、余裕のない人はさせないという状況になってしまいますが、これはやむを得ないことです。国に対して“子どもにピアノを習わせるから補助金を出せ”とはいえませんから」(橘木さん、以下同)

近年、問題視されている「親の所得格差が子どもの教育格差につながる」という観点で見れば、学校側の教育の質を向上させるために、国が何らかの動きをとることはできるでしょう。しかし、サッカーやピアノのような習い事に関しては、親がどうにかしなければならない問題のようです。

ちなみに、スポーツ活動で実際に多くの子どもが習っているのは、スイミングなのだとか。健康増進はもちろん、スイミングスクールの費用はさほど高くなく、用具もあまり必要でないことが人気を博している要因のひとつ。

従来通りでいい?先行き不透明な時代にお金をかけた教育をする意味は

子どもが興味を持ったものはできるだけ協力する

習い事については、親の年収次第といったところになってしまいますが、もし始めるとするならば、いつぐらい始めればいいのでしょうか?

「例えば、親のなかには子どもが2歳くらいのときからピアノを始めさせて、プロの演奏家を目指す人も少なくありませんが、実際にプロになれるのはごくわずかです。しかし、それでもいいと思います。演奏家になれなかったとしても“ピアノが弾ける”というのは子どもの心を豊かにしてくれるはずだからです。また、もし子どもから習い事をしたいといわれたら、親はできる限り協力してあげることが大切です」

最後に橘木さんは、「ピアノを習えば音楽会に行け、野球やサッカーを習えば大人になってからもスポーツ観戦できて、楽しい人生を過ごせるという大きなメリットが習い事にはあります」と話します。

習い事を通じて子どもの能力アップや感情の豊かさを育ませるということは、先々が不透明になっているいまの日本、そしてこれから先の将来を生き抜くための一助になるのではないでしょうか。
(文・奈古善晴/考務店)

※本記事の情報は執筆時または公開時のものであり、最新の情報とは異なる可能性がありますのでご注意ください。

お話をお聞きした人

橘木俊詔
京都大学名誉教授
日本の経済学者で、スタンフォード大学経済学部客員准教授、東京大学大学院経済学研究科客員教授、内閣府男女共同参画会議議員など、さまざまな経歴を持つ。『子ども格差の経済学「塾、習い事」に行ける子・行けない子』(東洋経済新報社)など、数多くの著書がある。
日本の経済学者で、スタンフォード大学経済学部客員准教授、東京大学大学院経済学研究科客員教授、内閣府男女共同参画会議議員など、さまざまな経歴を持つ。『子ども格差の経済学「塾、習い事」に行ける子・行けない子』(東洋経済新報社)など、数多くの著書がある。