電車のベビーカー問題、鉄道会社はどう考えている?

第3回 電車の中のベビーカー問題 みんなの見解
子育て中のママにとって、頭を悩ませる問題のひとつが電車内でのベビーカーの扱い。最近では各鉄道会社が電車内に「ベビーカーマーク」(ベビーカーをたたまずに利用してよいことを表すマーク)を掲示するなど、ベビーカーを安心して利用できる環境が整えられつつある。

しかし、電車内でのベビーカー利用についてはネット上などでは賛否両論がみられ、ベビーカー利用者とそうでない乗客の間でトラブルが起こることもあるという。

●鉄道各社はベビーカー問題をどう考えている?

各鉄道会社はこの問題に対してどのような見解を持ち、対応を行っているのか。鉄道会社5社に話を聞いた(JR東日本・東急電鉄・小田急電鉄・京王電鉄・東京メトロ)。

「昨今ベビーカーを利用して列車をご利用になるお客さまが増え、トラブルも発生しています。大切な赤ちゃんを守り、お客さま双方が安全・快適に電車をご利用できるよう、国土交通省による『公共交通機関等におけるベビーカー利用に関する協議会』に賛同し、キャンペーンなどを通じてご理解とご協力を呼びかけています」(JR東日本 担当者)

「『公共交通機関等におけるベビーカー利用に関する協議会』のキャンペーンなどを通じてご理解とご協力を呼びかけております。ベビーカー利用をめぐるお客さまの間でのトラブルについては、あくまでご利用になるお客さま同士のお話し合いとなりますが、必要に応じて、ご利用マナーやご協力についてお願いしています」(小田急電鉄 担当者)

そのほかの鉄道会社でもJR東日本と同様、ポスター掲出などで、日頃から乗客への周知を進めている。しかし、車内のベビーカー利用には賛否両論の意見が寄せられているのが現状のよう。

電車のベビーカー問題、鉄道会社はどう考えている?

●ポスターや冊子で周知活動も

電車内には「ベビーカーマーク」が掲示されているが、国土交通省が行った、「公共交通機関などにおけるベビーカーの利用について」のインターネットモニターアンケート(2016年9月実施)によればその認知度はまだ4割弱。さらなる周知が必要だ。

JR東日本では2017年5月、国土交通省が行ったベビーカーキャンペーンで、一般の乗客と、ベビーカー利用者に向けたポスターを掲出。キャンペーン期間終了後も、引き続きポスターの掲示を行い、ベビーカー利用者に対する鉄道員からの声かけやサポートを強化しているという。このキャンペーンでは各鉄道各社が連携し、周知活動を行った。

ほか、鉄道会社で独自の取り組みを行っているところもある。

「弊社では子育てサポートのための冊子『子育て応援ブック“子育てをするということ”。』のコラムの中で、誰もが快適に電車や駅を利用するために、電車の利用に関するルール、駅や電車の中で事故やトラブル発生時の対処方法を紹介しております」(小田急電鉄 担当者)

「東京メトロでは『メトロのトリセツ』という冊子を駅で配布しており、公式サイトからもご覧いただけます。この中でベビーカーをたたまずに乗車できることなどをご案内しています」(東京メトロ 担当者)

「駅係員にお申し出があれば、可能な範囲で誘導などのお手伝いをしています。また一本の電車に1カ所以上のベビーカースペースを配備しているほか、新造車両の導入やリニューアル工事のタイミングで全ての車両へのベビーカースペースの増設を進めています」(京王電鉄 担当者)

●ハード、ソフト両面から環境づくりへ

今後、鉄道各社では電車内のベビーカー利用を促進するため、どのような取組みを予定しているのかを聞いてみた。

「今後も協議会などと連携し、ベビーカーを利用される方、周囲の方双方にとって、安心・快適に利用できる駅や車内環境の整備に取り組んでいきます」(JR東日本 担当者)

「現在、ベビーカーや車いすをご使用のお客さまなど、ご乗車に当たり一定のスペースが必要となるお客様にも安心してご利用いただけるよう、車両内にフリースペースを設置しております。今後も車両の更新に合わせ、フリースペースなどを全車両に1カ所設置するよう整備を進めていきます」(東京メトロ 担当者)

「引き続き、ポスター等による告知活動を行ってまいります」(東急電鉄 担当者)

「現在計画中の新たな取り組みの予定はありませんが、皆さまに気持ちよくご利用いただけるよう、周知を継続していきます。」(小田急電鉄 担当者)

「これまでの取組みを継続し、駅構内のエレベーターについても、スペースが確保できる場合は、更新工事のタイミングで大型化を実施し、安心してご利用いただけるように努めていきます。」(京王電鉄 担当者)

今後も、フリースペースの確保などのバリアフリー化に加え、ポスターなどによるベビーカー利用についてのルール周知と、ハード面とソフト面両方の充実が望まれている。
(取材・文:北東由宇 編集:ノオト)