ママの子への愛情差、子どもへの影響は?

第2回 自分の子どもなのに…きょうだいの愛情差について考える
同じきょうだいでも、つい特定の子どもにひいきをしたり、愛情差をもったりする親は少なくない。きょうだいの間で差別や愛情差を感じて育った子どもは、どのように育つのか。女性と子どものための相談機関・フェリアンの窪田容子さんに話を聞いた。

●子に愛情差を感じる理由

「自分の子であっても、きょうだいで愛情差を感じてしまうママは少なくありません。その理由には妊娠・出産時の状況や、ママの過去などさまざまな原因が考えられます」(窪田さん 以下同)

きょうだいで愛情差が生まれてしまう原因として、下記のような理由が挙げられるという。

・妊娠・出産時の状況
たとえば、第一子の妊娠が予想外で仕事を辞めざるを得なかったが、第二子は計画的な出産だったというケース。「上の子のせいで仕事を諦めた」という思いから、きょうだいで愛情差が生じることがあるそう。また、子が、親の望んでいた性別でなかったことが原因になる場合もある。

・出生順位
出生順位で愛情差がついてしまうことも少なくない。幼い下の子をかわいく感じて、「最後の子育てを楽しみたい」という気持ちからつい甘やかしてしまい、上の子には「お姉ちゃんだから」と我慢をさせがちだ。一方、上の子は初めての育児なので思い入れが強いということもある。

・子の個性
子の寝付きが悪い、よく泣く、偏食があるなど、「育てにくい」と感じることで愛情差が生まれることも。育てやすいほうがかわいく感じる場合もあれば、手がかかるほど愛着をもつこともあるのだそう。

また、きょうだいのなかでもスポーツが得意、勉強ができるなど、親が望む才能を持っている子に対して関心が高くなる親もいる。ほかにも、素直で甘え上手な性格の子がかわいいと感じたり、容姿などで愛情差が生まれたりするケースもみられる。

・自分や他人を子に投影する
ママが、性格などで自分の嫌いな部分を子に見たとき、自身と子を重ね合わせてしまい、イライラしたり嫌悪感をもったりするケースだ。自分以外でも、ママがよい感情を抱いていない夫や義両親、実親に似ている部分を子に見出し、愛情がもてなくなることも珍しくないという。

たとえばママが自分の兄が嫌いな場合、上の子に兄の姿を投影し、厳しく当たってしまうパターンもある。

また、愛情差はなくても、女の子だけに家事などの手伝いをさせることが、子どもに不公平感を抱かせることも少なくない。

親子

●子への差別が生む、子への影響

たとえ親は自覚がなくても、子はきょうだいで差をつけられていることを敏感に察知する。親から差別を受けたり、愛情差を感じたりした子はどのような影響を受けるのか。

「『ほかのきょうだいに比べて、自分は親に愛されていない』と感じた子は、自尊心や自己肯定感が低く、劣等感や不安を感じやすい子になりがちです。親にきょうだいと比較され続けていた場合、自身も何かにつけ他人と自分を比べるようになり、そのたびに自信をなくしてしまうのです」

親からの愛情差や不公平感を感じ続けると、うまく自己主張ができなくなったり、親から関心を持ってもらいたいがゆえに暴力などの問題行動につながったりすることがある。その結果、対人関係がうまく形成できない大人に成長する場合があるそうだ。

「逆に、ほかのきょうだいより親にひいきされている子にも悪影響を与える可能性があります。子は親の愛が条件付きであることを察知し、その要素が自分からなくなると親から愛されなくなるのでは、という不安を感じたり、自分を守るために親に同調する一方で、きょうだいに対して罪悪感をもったりしながら育つケースもあります」

●まずは「気づく」ことが大切

子が「お兄ちゃんばっかりずるい」「○○(ほかのきょうだい)と私、どっちが好き?」とひんぱんに発言するようだったら、まずママ自身がきょうだいに対して不公平な接し方をしていないかを見直してみよう。

また、子に攻撃的・暴力的なふるまいが多い、きょうだいに対して意地悪をくり返す、きょうだい仲が極端に良くない、という場合も、親の接し方が元で子が情緒不安定になっている可能性が考えられる。

「問題は愛情差をもってしまうことではなく、自覚なく子どもに不当な扱いをしてしまうことです。ママが自身のふるまいに気づくことができたら、対応に気を付けることができます。愛情をかけてないと感じるほうの子に意識的に声をかけたり、2人だけの時間を持ったりすることを心がけましょう。夫に自分の気持ちを話して、子のフォローをお願いするのもひとつの方法です」

なぜ愛情の差が生まれるのかに目を向け、自分の気持ちに向き合ってみよう。完璧なママはいないが、子どもへの愛情差に悩んでいたり、もし、自分自身や嫌いな誰かを子に重ね合わせたりしてしまっている場合は、自分自身の気持ちを整理していくために専門家によるカウンセリングもおすすめだ。
(取材・文:北東由宇 編集:ノオト)

お話をお聞きした人

窪田容子
窪田容子
フェリアン
女性と子どものための心理相談機関として評判の高い、フェリアン所長。臨床心理士。立命館大学・花園大学非常勤講師。子育てに関する著書・雑誌記事など多数。
女性と子どものための心理相談機関として評判の高い、フェリアン所長。臨床心理士。立命館大学・花園大学非常勤講師。子育てに関する著書・雑誌記事など多数。