社交不安障害かも?人前に出るのが極端に苦手…
この記事は「アリシー」から提供を受けて掲載しています

社交不安障害かも?人前に出るのが極端に苦手…

第13回 知っておきたい病気・健康のはなし
7人に1人が発症する!?
大勢の前で意見を言ったり、知らない人と話したり……こんな場面では誰しも多少は緊張するものですが、中には動悸がするなど、身体に明らかな異変が生じてしまう人も。社交的なやり取りを極端に苦痛に感じたら、それは社交不安障害かもしれません。

心療内科・ベスリクリニックの田中奏多先生に、社交不安障害の症状や原因、対処法などを伺いました。

■人前での飲食も苦痛…社交不安障害の実情とは

──社交不安障害とはどんな状態ですか?

「誰かの注目を浴びるかもしれない状況に大きな不安や恐怖を感じ、ネガティブな評価をされるような行動をしてしまわないか、不安症状が出てしまわないかと恐れる状態です。

『自分がバカなことをしたり、言ったりするのでは』『自分の行動で恥をかいたり、人に拒絶されたりしないか』『誰かの迷惑になってしまうのでは』などと恐れるあまり、人と一緒にいることが怖くなり、人との交流を避けるようになってしまうのです」

──身体にはどんな症状が出ますか?

「自律神経が乱れることで色々な症状が出ます。汗を大量にかく、声が出にくくなる、身体や手足が震える、お腹が鳴る・痛くなる、動悸がする、赤面する、息苦しくなる、吐き気がする、トイレが近くなる、めまいがする、身体や表情がこわばるなど、実に多岐に渡ります」
──症状はどんな場面で出やすいですか?

「まず、社交的なやり取りをする場面が挙げられます。雑談をする、よく知らない人に会う、相手に反対意見を言う、自分よりも権威のある人と話す、異性と話す、人を誘う、相手の目を見て話す、知らない人の多い集まりに参加する、あまり知らない人に電話をかける、かかってきた電話に出るなど。

他人の前で何らかの動作をすることで症状が出てしまう場合もあります。聴衆の前で話す、会議で意見を言う、人が集まっている部屋に入る、人に見られながら仕事や勉強をする・文字を書くなど。公共の場で飲食する、他人が乗っている公共交通機関を利用することでも不安を抱いてしまう人もいます」

──プレゼン前や、知らない人が多い席などで緊張することは誰しもあるかと思います。社交不安障害とそうでない人の違いは何でしょうか?

「確かに緊張する場面は誰にでもありますので、紙一重かもしれません。ただ、社交不安障害の場合は生活に支障が出てしまうほどの強い不安感がある点が異なります」

■7人に1人が発症の可能性あり。気付いていない場合も…

──原因は何だと考えられていますか?

「精神的な疲労からネガティブな評価への不安感が増すことです。社交不安障害の本質は人からネガティブな評価を受けることへの不安で、多くの患者は自分自身をネガティブに捉えています。身体や感情、脳の疲労が精神的な疲労につながり、心の動揺が大きくなり、不安感が増してしまうのです」

──どのような人がなりやすいですか?

「男女差はそれほどありませんが、批判的な人や、世間体を過剰に気にする人に影響を受けて育った場合が多いようです。うつ病やその他の不安障害、アルコール依存などと一緒に発症する人も多く見られます。

一生のうちに7人に1人程度がかかるとされており、割合は決して低くはありません。発症平均年齢は13歳なのですが、自分の性格だと思っていて社交不安障害とは気付かず、未治療の人も多いのです。なお、治療せずに症状が改善することは稀です」

■病院での治療と生活習慣の改善が大切

──治療はどのような方法で行いますか?

「病院では薬物療法と認知行動療法を行います。薬物療法では抗うつ薬が推奨されており、例えばプレゼン前など不安を感じる時にのみ薬を用いることも有効と考えられています。

認知行動療法では薬に頼らず、社交不安障害の心理の勉強や、リラクゼーションなどを行います。薬物療法は効果が早く現れ、認知行動療法は効果が長続きするとされています」

──患者が自分で症状に対応するにはどうしたら良いですか?

「症状が出ている時は、5秒間息を吐いてみてください。細く長く呼吸をすることで副交感神経が優位になり、リラックス状態をつくれます。もし過呼吸になってしまった時は、3秒で吐き、3秒で吸うというリズムを数えながら鼻で呼吸してみましょう。吐く時にゆっくり『リラーックス』などと声を出す方法もあります」
──日頃からできる予防策はありますか?

「タバコやカフェイン、アルコールは不安の引き金になる場合もあるため、摂取を控えることをおすすめします。

睡眠・運動・食事も大切です。睡眠は毎日の起床時間を守り、起床後は日光を浴び、午後の昼寝は座りながら15分程度に抑え、16時以降は昼寝をしないようにします。運動は夕方頃にウォーキングなどの少し汗ばむ程度の有酸素運動や、就寝前のストレッチなどが良いでしょう。食事では急激な血糖値の変動がパニックを起こすことがあるので、玄米や豆類などの血糖値の上昇がゆるやかになる低GI食品や、野菜や海藻類など食物吸収のスピードを抑えてくれる食物繊維を摂るようにしましょう。

なお、女性の場合は女性ホルモンの影響も大きく、生理前後や排卵期などに症状が集中することもあります。症状が集中しやすい時期がある場合は、それ以外の調子が良い時に体調を整えておくことが大事です」

──完治することはできるのでしょうか?

「社交不安障害は治療可能な病気です。しかし、私たちの人生から不安を完全になくすことはできません。不安を抱えながらも、他人と良い関係を築けるようになること、不安や人間関係をコントロールする感覚を持つことが大切です」
生きていく上で人との関わりは不可欠で、だからこそ悩みは尽きません。「自分は人付き合いが苦手だから……」と我慢し続け、辛い思いをしている人は、病院で相談してみるのも手かもしれません。

もし周囲に悩んでいる人がいたら、「不安になる時もあるよね」などと共感し、支えてあげてくださいね。

(五十嵐綾子+アリシー編集部)
五十嵐綾子
五十嵐綾子
ALICEY世代ど真ん中のフリーランスライター・編集者。史学科出身&世界遺産検定1級の世界史系歴女でもあります。知らない世界に飛び込むことや新たな発見をすることが大好きなので、読者の皆さまの世界が広がる記事をお届けします! ※背景画像撮影:中里健太(@LENS_BLOG_)
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女性向けに情報を発信するWebメディア「アリシー」は、2019年6月13日をもってサービスを終了しました。グルメやファッション、マンガ・エッセイなどアリシーの一部コンテンツは、姉妹サイト「ママテナ」に移管しております。引き続きお楽しみください。
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